1. 合同会社クアッガ 代表 斉藤 優也 氏

東京都創業NETインタビュー

合同会社クアッガ 代表 斉藤 優也 氏インタビュー

合同会社クアッガ 代表 
斉藤 優也 氏
北海道の農家に生まれ、広大な自然に囲まれて育った。幼い頃から環境に対する関心が強く、できるだけ電気を使わない、エレベーターを使わないといった小さな行動を実践していた。大学から大学院にかけて、生態学や有機農業を学んだが、経済活動と自然維持の両立という二律背反に限界を感じ、経済活動を通じて自然を守る方法を模索し始める。徹底的なリサーチの末、「ロスパンの予約販売によって、フードロスを削減する」という活動から一歩を踏み出した。
合同会社クアッガ Webサイト

「ロスパン」を減らすという小さな活動から世の中を変え、人々を幸せにする

社名となっているクアッガは絶滅したシマウマの一種。クアッガの事業の柱は、インターネットサイト「rebake(リベイク)」を通じて、パン屋さんで売れ残ったまだ食べられるパン=「ロスパン」を、会員の消費者に割安で予約販売するサービス。現在、全国のパン屋さん約300店と消費者約6万人が会員登録している。増え続けるフードロスの削減につながることからも注目を集めている。

子どもの頃から自然と経済の両立を意識していた

北海道で生まれ、視界360度すべてが農地という環境に育ちましたが、ある日突然高速道路が開通し、インターチェンジができました。幼い頃から自然が大好きで、環境問題に対する意識は人一倍高かったので、目の前に突然現れた人工物に衝撃を受けました。しかし、一方で、道路ができて喜んでいる人もいる、経済が発展するためには道路も必要なのだと子ども心に理解しました。
この頃から漠然と、自然と人間の共生について考えるようになりました。

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大学院での学びから、「食と廃棄」へと関心が向かう

大学では生態系や環境問題について学びました。自然保護の分野で研究職を目指すことも考え大学院に進みましたが、学べば学ぶほど、経済活動なしでは自然や生態系は守れないことがわかってきました。

経済活動と自然保護とを両立できるものは何かと模索するうち、食と廃棄というテーマに行きつきました。ビジネスの糸口を見つけるために、農業系のベンチャー企業で働くかたわら、産業廃棄物関連の会社を何十件も回ってヒアリングしたり、海外のリサイクル会社や動向をインターネットでリサーチしました。

食については、生産、加工、流通、保管、販売といったフードチェーン全般について徹底的にリサーチ。最終的にフードチェーンの末端の、販売段階での食品ロスの削減に取り組もうと、2018年に友人と二人で合同会社クアッガを設立しました。

「ロスパン」を予約販売する通販サイト「rebake」を開設

ビジネスの対象をパン屋さんにしたのは、レストランなどの飲食店では対象となる食品の幅が広すぎて手に負えないこと、そして私が無類のパン好きだったことが理由です。

「rebake」をスタートするまでに、全国約200件のパン屋を訪ね歩き現場の悩みを聞きました。その結果わかったのですが、パン屋さんは味に対するこだわりから、売れ残ったパンを1日で廃棄しています。食品ロスの悩みは切実でした。一方、パンは実は1~2週間は日持ちしますし、冷凍もできます。再販の可能性があると思いました。また、作ってから消費期限内に売り切ろうとするから廃棄が出る。ならば予約販売にすればいいのではと考えました。
これが、「rebake」の発想の基本となりました。

利益よりも、誰かが喜ぶことを一番に考える

現在、登録しているパン屋さんは300件超。会員は6万人を超えています。しかし、まだ利益は出ていません。日本政策金融公庫や銀行から融資を受けたり、副業としてホームページ制作やシステム開発の仕事も受注しながら、アルバイトも含め6人のスタッフにも給料を支払い、なんとか運営しています。

あと1、2年内には、「rebake」の事業だけでビジネスを回していけることを目指しています。しかし、実は私は、利益を上げて会社を大きくすることにあまりこだわっていません。

確かにお金は必要ですが、まず大事なことは、「rebake」に関わってくださっているパン屋さん、消費者の方々、当社のスタッフ、みんなの幸福度を上げること。経済的合理性よりも、誰かが喜ぶことを一番に考えたい。みんなが幸せになれば、最終的には世の中がよくなっていく。そんな仕組みを作ることが私の理想です。

根本的な解決にはならなくても、行動することに意義がある

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我々の活動が、食品ロスを減らす根本的な解決にならないことはわかっています。末端でどれだけロスを減らしても、フードチェーン全体で見たら微々たるものです。それでも、「rebake」の仕組みを続けていくことに意義がある。

社会全体、地球全体をよくすることは不可能です。だからといって、自分のまわりだけよくなればいい、という考え方ではいけない。いろいろな人が小さいことを積み重ねていく先に、可能性が見えてくるものだと思っています。

フランスでは、2016年に「賞味期限切れ食品」の廃棄を禁止する、フードロス法が成立しました。日本でももし同様の法律が成立すれば、「rebake」のような事業は必要なくなるかもしれない。それは、事業としては困ることですが、地球環境全体から考えると喜ばしいことです。

「自分の会社さえよければ」という独善的な考え方に陥ってはいけない。「rebake」のような事業が大きくなることは、地球環境にとっては実はよくないことなのかもしれない。

会社にとってのリターンとは何でしょうか。利益を上げることでしょうか。私は、リターンは人それぞれが決めればいいと思っています。会社が利益を上げることよりも、我々の活動によってみんなが幸せになり、世の中がよりよい方向に変わること。それが、私にとってのリターンですね。

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