1. 株式会社SJOY 川口相美 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社SJOY 川口相美 氏

株式会社SJOY
川口相美 氏
1995年生まれ。大学でファッションを学んだ後に、イッセイ・ミヤケのグループ会社に就職。その後、2019年10月に両親の経営するアパレル貿易会社・株式会社SJOYを継承し、代表取締役社長に就任する。2020年には社内スタートアッププロジェクトである洋服圧縮サービス「PocketTips」を立ち上げ。2024年11月より羽田空港をはじめとした国内空港にて、洋服圧縮サービスの実証実験を行なっている。
株式会社SJOY コーポレートサイト

洗濯・乾燥に次ぐ洋服の第3の選択肢として「圧縮」のある世界を目指す

かさばる洋服を圧縮することでコンパクトに収納

洋服をコンパクトなサイズに圧縮するサービス「PocketTips」を提供しています。以前から畳んでも畳んでも洗濯物が片付かないことや、かさばるせいで収納が追いつかない洋服に対して憤りを感じていたこともあり、洋服の保存や携帯方法の新しい在り方を考えていました。そこで行き着いたのが、洋服を手のひらサイズに圧縮して手軽に保管するといったアイデアです。
PocketTipsでは油圧機を応用した圧縮機により、Tシャツ1枚であればスマートフォンサイズにまで小さくすることができます。圧縮技術の活用法についてのアンケート調査を500人以上に行ったところ、旅行、衣替え、引っ越し、思い出の洋服の保存といった複数の用途が見つかったため、現在は実用化に向けて一つずつ進めている最中です。2024年11月には羽田空港での実証実験がスタートするなど、まずは旅行のパッキングにおける洋服の圧縮からサービスを展開しています。

株式会社SJOY 川口相美 氏

コロナ禍に背中を押された新規事業

2019年10月に両親が経営するアパレル貿易会社を引き継いだのですが、ちょうど新型コロナウイルスが中国で流行した時期と重なり、海外生産はすべてストップしてしまいました。当時は、OEMやODMなどの既存事業を継続させていくつもりだったので、浮いた時間をどうやって活用しようかと考えました。
そこでまずは、スタイリストであり学生時代からの友人である石田悠さんに洋服圧縮のアイデアについて話をしたところ、仕事柄洋服に囲まれている彼女は大きく共感してくれたのです。目の前にいる一人の人間がこれだけ共感してくれるなら、世界中に同じ想いをもっている人がたくさんいるのかもしれない。もしかしたら自分が欲している圧縮技術はビジネスになるのかもしれないと、そのとき初めて感じたのです。
私は石田さんをパートナーに迎えて事業を立ち上げましたが、二人ともアパレル業にしか携わってこなかったため、起業や圧縮技術に関する知識は皆無でした。そこで勉強が必要だと思い民間のセミナーに参加したのですが、全くの場違いだったことが判明。叩き上げで起業するのであればアクセラレータープログラムに参加した方がいいと言われたことがきっかけで、まずは一般社団法人が運営するプログラムに参加することにしました。

株式会社SJOY 川口相美 氏

アイデアをかたちにしてくれた町工場

「洋服を手のひらサイズに圧縮するにはどうしたらいいか」と聞いて回ったところ、アクセラレータープログラムのメンターの方から油圧機の存在を教えていただきました。そこから、洋服専用の油圧機の型を作成すれば圧縮できるのではないかという結論に至ったのですが、型をどのようにして作るのかも分からなかったため、プログラムの仲間たちに町工場の探し方などを教えてもらうところから始めました。
何十件もの町工場に足を運んだものの、どこもかしこも門前払いでした。そこで大田区のとある町工場にアルミの棒を持って行き「御社の技術があれば作れますよね」と強気の姿勢で提案すると、その場でサンプルを作ってくださることに。しかも、その型を使って圧縮をしてみたところ初回で成功したのです。
もともと私自身は起業家になるつもりは全くなかったのですが、周囲に圧縮の話をすると皆が面白がってくれました。「皆が私のアイデアを良いと言ってくれるということは何かあるのだろう」という探究心が、ここまで私を突き動かしたのかもしれません。

株式会社SJOY 川口相美 氏

2度目の挑戦でファイナリストに選出

たまたま国内のコレクションブランドである「HOUGA」さんと知り合う機会があり、初めて一般消費者に圧縮した洋服を販売することになりました。そこでの販売実績ができたため、圧縮機の自動化や広告費における資金面を調達しようと、TOKYO STARTUP GATEWAY 2023(TSG)に参加することにしました。
TSGでは2週間に1度のメンタリングがあるのですが、そこでは感情を公私で切り分けるといったマインドのマネジメント方法をはじめ、私が抱えているさまざまな悩みの相談に乗っていただきました。実はTSGは2020年にも挑戦していたのですが、そのときはセカンドステージまでしか行くことができませんでした。もう一回チャレンジしてみたいとの思いから挑んだところ、2023年にはファイナリストに選んでいただくことに。参加したことで強制的に事業を進めざるを得なくなったこともメリットでしたが、それ以上にTSGのメンターの方に「terminal.0 HANEDA」がオープンするという情報を教えてもらったことが収穫でした。
terminal.0 HANEDAは羽田空港のさまざまな課題に対してオープンイノベーションで研究開発を行う施設ですが、PocketTipsは旅との相性が良いことや大田区の町工場とタッグを組んでいることもあり、現在はここを拠点に活動を進めています。2025年には空港内への圧縮機常設を目指すほか、ゆくゆくは洗濯機と圧縮機を合体させて、洗濯後の洋服が自動で圧縮できる世界を目指しています。先月から参加したAPT womenも活用して、さらに事業を加速させていきたいですね。

株式会社SJOY 川口相美 氏

起業を目指す方へのメッセージ

起業への想いを一旦諦めてみることです。それでも寝ても覚めても起業のことしか考えられなかったり、出てくるアイデアを抑えることができないのであれば、まずは目の前にいる友人や同僚に話をして、一人でもいいので共感者を見つけてほしいと思います。
あとは、自分が一番やりたくないことと起業への想いを天秤にかけたときに、やりたくないことに目をつぶれるかどうかも起業をする際のポイントだと思います。私は人前に出ることが何より苦手なのですが、圧縮の事業のためなら表舞台に立とうという気持ちになれるんです。偉そうなことを言っているかもしれませんが、起業というものが大変だからこそ、皆さんには立ち止まって熟考してもらいたいと思っています。
とはいえ、起業家になれば学歴も年齢も性別も関係なく、互いの事業のことだけで話が盛り上がるといった関係性を築くことができます。もともとお酒が大好きだったのですが、お酒がなくても仲を深めることができるのだと、起業をしたことで初めて知りましたね。

記事内の創業・成長支援プログラム

TOKYO STARTUP GATEWAY

TOKYO STARTUP GATEWAYは、テクノロジーから、モノづくり、ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える若き起業家を輩出するスタートアップコンテストです。
優秀なビジネスプランなど、初めは必要ありません。「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、思い切り磨いていってください。

PAGE TOP