1. 認定NPO法人AfriMedico 代表理事 町井 恵理 氏

東京都創業NETインタビュー

認定NPO法人AfriMedico 町井 恵理 氏

認定NPO法人AfriMedico
町井 恵理 氏
薬剤師として働きながら休暇で海外へボランティアに行く生活を続けてきた。青年海外協力隊としてアフリカ・ニジェール共和国で、2年間のボランティア活動に従事し、アフリカの医療課題を改善したい思いを抱くように。想いを形にすべく、2015年3月にAfriMedicoを設立した。
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日本発祥の「置き薬」でアフリカのすべての人々に健康と笑顔を

より必要性のある場所で。医療の行き届いていないアフリカに薬を届けたい

認定NPO法人AfriMedicoを設立したのは2015年3月のこと。「すべてのアフリカの人々へ健康と笑顔を」をミッションに掲げ、日本発祥の置き薬事業の普及などを通して現地の方の健康増進を目指した活動をしています。現在は風邪薬や胃薬、外用剤など、日本では薬局で購入できるような薬を「置き薬」としてタンザニアの村の家庭200~300へ提供・配置しています。医療が行き届いていない地域で「医薬品へのアクセスが容易になって助かっている」という声をいただいていますし、最近実施した使用者の方へのアンケートで9割以上の方が満足してくださっていました。
現在の活動を始めるきっかけになったのは、青年海外協力隊としてアフリカのニジェール共和国へ行ったこと。せっかくなら行く意味がより感じられる場所へと、2年間のボランティア活動に従事しました。感染症対策に関する知識を広める中で知ったのは、貧しい国では、正しい知識があっても経済的な理由で正しい感染予防をするのが難しいこと。そして薬があれば助かる命がたくさんあるのに薬がなく、薬剤師である私には何もできないという悔しい思いも経験もしました。そんな現状を変えるべく、何かできないかと飛び込んだのがグロービス経営大学院。私はどちらかというとサポートが得意なタイプ。ボランティア活動をしている最中は、私自身が法人を立ち上げる気なんて全くありませんでした。それでも何とか現地の状況変えたい思いでアフリカの医療貢献のためのビジネスモデルを考え、実行に移そうとAfriMedicoを立ち上げたのです。

認定NPO法人AfriMedico 町井 恵理 氏

100のビジネスモデルの中から、3つの条件を大切に選んだ「置き薬」事業

薬を用いるビジネスにすることは最初からイメージしていたのですが、検証のため100くらいのビジネスモデルを考えました。大切にしたことは

1. 自分がやりたいと思えるか
2. ノウハウや強みが活かせるか
3. 本当にアフリカの課題解決に繋がるか

という点です。正しい知識を広めるためのセミナーをする、トリアージのオペレーション改善など命を救うものをいくつも考えましたが、やはり日本の伝統・置き薬の仕組みが現地に一番マッチすると思えたのです。置き薬が機能するのは、インフラが整っておらず、大家族、皆保険制度がない地域。アフリカは、仕組みが適切に機能する条件にぴったりだったのです。滞在していたニジェールから活動し始めることも考えましたが情勢的に難しく、タンザニアの薬剤師の方と知り合ったこともあり、現在の形で進めることになりました。

認定NPO法人AfriMedico 町井 恵理 氏

ビジネスコンテストの活用がNPO法人の設立を加速。業界をこえた仲間づくりも

当初は仕事の休暇を使って、年2回ほどアフリカへ行き活動していました。1回30万円ほどかかる渡航費も自費でまかなっていたので負担が大きかったのです。せめて渡航費だけでも得られたらと、ビジネスコンテストに出場するようになりました。そこで参加したコンテストのひとつが、東京都が主催するTOKYO STARTUP GATEWAY。2014年の第1回に参加し、最優秀賞に選ばれました。
TOKYO STARTUP GATEWAYは複数のビジネスコンテストにエントリーした中でも、1番しっかり参加者に伴走してくれたと感じます。メンターと共にアイデアを磨く機会があり、同期の参加者にはアドバイスを受けてビジネスモデルを大きく変更した人も。具体的で、次に取るべきアクションも見えてくる業界を知っている方からの有用なアドバイスをいただける場にもなると思います。
参加してよかったと今でも思うのは、横のつながりができたこと。同時期にスタートする仲間と出会えたので、業界をこえても同じように歩んでいけるのは心強いです。似た課題で悩んで共感しあえたり、会社を作っていくうえで参考になる話がもらえたりします。間もなく10年経つので、それぞれの企業が変化していく様子にも刺激を貰っています。

仲間とともに目指すのは、アフリカの人々のセルフメディケーション

私が取り組んでいるのが命に関わる医療分野なので、これまでは研究として置き薬の効果のエビデンスを取りながら、それに基づいて一歩ずつ歩みを進めてきました。アフリカの人々の健康増進に繋がっているデータも集まっているので、今後は徐々に置き薬を届ける家庭数や国を増やしていこうと考えています。
ここ数年の新型コロナウイルスの流行で活動が思うように進まない時期がありましたが、一国で対応出来る問題でもなく改めてグローバル・ヘルスの重要性を再認識しました。政府が動く部分も大きいけれど、私達ができることもたくさんあります。渡航しなければできなかった活動が、オンラインで進められるようになったという良い面もありましたし、2022年には現地法人も立ち上げました。第二子を出産して自分が動けない中でも活動が続けられているのは、日本の40人、現地20人ほどのメンバーが共感して、一緒に動いてくれているからです。アフリカに「早く行きたいなら1人で行け。遠くに行きたいなら仲間と行け」という諺があります。今後、AfriMedico内外のメンバーと一緒に活動を続けながら、最終的にはアフリカの人々が自身の健康を自分たちでケアできるセルフメディケーションに繋げていきたいです。

認定NPO法人AfriMedico 町井 恵理 氏

起業を目指す方へのメッセージ

やりたいことがまだ明確でない方は、方向性を具体的にしていく意味でもビジネスコンテストにエントリーしてみて下さい。 私自身も、ビジネスコンテストに応募して初めて想いが言語化されカタチとなり、法人設立に繋がりました。私自身アフリカの医療に貢献したい思いがあってMBAのコースに入ったけれど、何をしたらいいのか具体的には分からないまま2・3年を過ごしました。そうして思い悩む時期にも価値はあったと感じています。ビジネスコンテストを活用したり、興味のある分野の団体の手伝いをしたりすることで自分の想いが雪だるま式に膨れ上がっていくと思いますし、やりたい思いが具体的な形になったときが、起業を進めるタイミングなのではないでしょうか。

記事内の創業・成長支援プログラム

TOKYO STARTUP GATEWAY

TOKYO STARTUP GATEWAYは、テクノロジーから、モノづくり、ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える若き起業家を輩出するスタートアップコンテストです。
優秀なビジネスプランなど、初めは必要ありません。「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、思い切り磨いていってください。

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