1. 株式会社kessaku 藤井 智大 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社kessaku 藤井 智大 氏

株式会社kessaku 藤井 智大 氏 幼少期から青年期までをスイス、イギリス、マルタなどの欧州で過ごす。2019年に慶應義塾大学環境情報学部を卒業した後、自動車メーカーや複合型リゾート開発運営会社等で、デザイン戦略・ユーザーエクスペリエンス設計・ブランド戦略に従事。その後、起業を見据えて渡英。2023年にロンドン芸術大学大学院経営学修士(MBA)課程修了後、2024年に大学時代の仲間とともに株式会社kessakuを設立。現在は東京と長野の2拠点で生活を送る。
株式会社kessaku コーポレートサイト

空き家化が進む日本の名建築を、収益が出せる魅力的な物件へと再生する

空き家の古民家をホスピタリティあふれる資産に

大学入学まで長らくスイスに住んでいたのですが、欧州は家並みが美しく古い建物の活用が進んでいる反面、日本は魅力的な建築であっても古くなると価値がつかないというのが印象的でした。このような現状に対してもったいないと感じていた時期に、ちょうど日本で取り上げられるようになったのが空き家問題です。
もともとヴィンテージ品が好きだったことや、大学院ではインバウンドに対するマーケティングを研究していたこともあり、まだまだ価値が見出されていない古民家などの名建築を、よりよい形で活用したいとの思いから株式会社kessakuを設立しました。kessakuでは、魅力的な文化が色濃く残る土地で空き家となっている名建築を、富裕層の方々に一棟買いしていただき、収益性の高い資産へと変わるようにデザインしてリノベーション。宿泊施設として運用するお手伝いを行なっています。

株式会社kessaku 藤井 智大 氏

デザインの“ちから”でビジネスを起こしたい

昔のデザインからインスピレーションを受けてものづくりをするというプロセスが、個人的にはとても好きです。なかでもヴィンテージカーが好きだったこともあり、大学在学時の夢はデザインディレクター。卒業後に入社した自動車メーカーでは、デザイン部で一番のディレクターになることが目標でした。
けれども入社数年後には、既存ブランドのデザインではなく、自身のブランドを作っていくプロセスに興味を持つように。そこで、まずはビジネスの基本を学ぼうとイギリスの大学院に進学しました。とはいえ、その時点では古民家を活用するといったビジネスモデルは全く考えておらず、正直なところ起業を決意するようなターニングポイントもありませんでした。ただ、幼少期から見てきた欧州の街並みや、大学院で出会った人たちから得た刺激などが複合的に絡み合い起業に至ったのだと思います。大学院には起業されている方も多く、経営者が身近にいたという蓄積は、起業するにあたっての重要な経験でしたね。

株式会社kessaku 藤井 智大 氏

社内外に壁打ち相手がいることで事業は加速

大学院修了後は長野県で家を探していたのですが、その際に「魅力的な建築なのに空き家になっているなんてもったいない」と感じたことが事業の原点です。ただ、古民家を所有するだけではコストが発生するばかりになってしまうため、収益を生み出せる建物に再生しようというのがkessakuのはじまりでした。
2024年の2月に会社を設立し、3月にはプレシード資金を調達。名建築を小口で購入する共同所有のビジネスモデルとしてスタートさせたものの、右も左も分からない状態だったためASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)に参加しました。初期のプロダクトローンチとASACへの参加のタイミングが近かったこともあり、メンターの方とは、プレスリリースをどうするのか、顧客への認知から購買までをどうつなげるのかといった一連の流れをディスカッションさせていただきました。
kessakuは3人のメンバーで立ち上げたのですが、仲間とともにアイデアの壁打ちやディスカッションを行うと、お互いの相乗効果で事業に勢いがついていくような感じがありました。そこにASACのメンターという壁打ち相手が加わったこともあり、うまく進んでいったのだと思います。

株式会社kessaku 藤井 智大 氏

起業家に共通する悩みは人材確保と資金調達

チームマネージャーとして人の上に立つことが初めてだったため、どういう人がkessakuに合うのか、どうやればうまく動いてくれるのかといった部分にはかなり苦労しました。そんななか創業メンバーの1人が2024年末に抜けることになり、調達した資金も年明けには尽きることが見えてきました。
そこで事業内容を、小口での共同所有から販売件数が見込める富裕層をターゲットにした一棟売りへと方向転換。販売した物件からデザイン設計費をいただくことでキャッシュフローを改善させ、事業を少し安定させることができました。ASACの同期にはさまざまな事業テーマの起業家が集まっていますが、メンバーの退職や資金調達の問題は共通していることだと思います。皆が同じ様なステージにいるので、互いの進捗を共有することで学び合っています。
今後はインバウンドの方々に日本の文化を感じていただくためにも、グローバル市場を視野に入れて外貨を稼いでいきたいと考えています。現在の主な顧客は日本の文化に関心が高いシンガポール周辺の方々ですが、今後はkessakuのビジネスが、どの国と合致するのかも見極めていきたいですね。

起業を目指す方へのメッセージ

起業というのは、業(仕事)を起こしてお金を稼ぐというゲームなので、どういう仕事でお金を稼ぐのかが大切だと思います。いろいろな起業家の方とお話をするなかで感じたのは、我々みたいに好きなことを仕事にする方と、市場の動向を見てチャンスがありそうだからと起業するパターンの方がいるということです。どちらのパターンを選んでもいいですが、起業するのであれば、自分が本当にやり切れる方を選ぶことが重要だと感じています。
また、私自身も起業前から起業支援プログラムに参加していたのですが、起業する前から進められる準備は意外と多くあります。勢いだけで起業することも一つですが、なるべく低リスクで進めるためにも事前の準備はあるに越したことはないですね。
どうやって顧客を見つけるのか、どう資金調達をして商品づくりを進めていくのかなど、起業後も複合的に考えなくてはならないことばかりです、それは苦しくもありますが楽しむ事も必要だと思います。

記事内の創業・成長支援プログラム

青山スタートアップアクセラレーションセンター

1クール3ヶ月間(プレシード)/5ヶ月間(シード)の短期集中型アクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。

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