1. 株式会社MISOVATION 代表 斉藤 悠斗 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社MISOVATION 斉藤 悠斗 氏

株式会社MISOVATION
斉藤 悠斗 氏
もともと好きだった食への関心、重度の認知症となった祖父の介護経験から栄養学に興味を持ち、東京農業大学へ。栄養士免許を取得。卒業後、カゴメ株式会社、株式会社リクルートキャリアにて営業に従事。会社員として働く中で、ビジネスパーソンにおける予防医療の大切さを実感。2021年2月リクルートキャリアを退職後、株式会社MISOVATIONを設立。
株式会社MISOVATION Webサイト

完全栄養食のみそ汁で、予防医療に寄与するというイノベーションを

日常食、高栄養、おいしい。完全栄養食のMISOVATION

MISOVATIONは、野菜や豚肉など15種類の具材を使った完全栄養スープです。加熱に弱い栄養素を守るために瞬間冷凍した具材と水を器に入れ、電子レンジで加熱するだけで完成します。毎月合わせるみその種類を変えながらサブスクリプション方式でお届けしています。
人間は約31種類の栄養素をバランスよく摂ることが健康増進において重要だといわれていますが、みそには25種類の栄養素が入っています。単体の食品で25種類の栄養素が入っている食品は、なかなかありません。かつ発酵食品なので腸にもいいし、みそ汁にすれば毎日飽きずに飲めるし、何よりもおいしい。まさにみそは天然のサプリメントともいえます。
近年、様々な健康食品が増えましたが、栄養価を高めた食品は無機質なものが多く、おいしさも半減したりして、理想的なものが少ないと思っていました。そんなときに偶然ですがTwitterに「豚汁って完全食だよね」という投稿が流れてきたのを目にして、これだと思ったんです。豚肉や豆腐でタンパク質が摂取できて、野菜は何を入れてもいいのでビタミンやミネラルの量をコントロールしやすい。それでいて糖質も脂質も少ない。完全な栄養食になるように計算された理想的な豚汁をつくるところからスタートし、MISOVATIONが完成しました。

株式会社MISOVATION 斉藤 悠斗 氏

食を大切にすることが予防医療につながる

もともと食べることがすごく好きで、家族との思い出のなかに常に食があったんです。祖父が認知症だったこともあり、食べ物と病気について考える機会も多かったです。大学に進学する際に自分の好きなこと、興味のあることは“食”以外にないと思い、栄養学を学びました。栄養学を学ぶと、例えばみそ汁に入れる野菜の一つひとつに含まれる栄養素はそれぞれに違って、その栄養素を足し算して摂取すると、病気を予防したり、元気になったりといった効果が得られることが分かってくるんです。食べるとは「おいしい」や「調理が楽しい」という快楽的な側面だけでなく、生きるために大事な行為だと強く思うようになりました。
健康を当たり前にする仕事に就きたいと考え、最初は食品メーカーのカゴメに就職しました。それからリクルートに転職して、仕事がどんどん忙しくなると僕自身が栄養の偏った食事しか取れなくなってしまい、自身の体調管理や健康が疎かになってしまいました。忙しいビジネスパーソンにとって食を通した予防医学の重要性を感じたことで、健康を当たり前にすることに貢献できるものをつくりたいと考えるようになりました。

株式会社MISOVATION 斉藤 悠斗 氏

ビジネスコンテストに参加したことで、起業の目的が明確に

TSG(TOKYO STARTUP GATEWAY)2020にエントリーしたのは2020年5月で、セミファイナリストにまで残ることができましたが、僕はまだ会社員で、みそにも絞り切れていませんでした。健康を意識して野菜をふんだんに使った惣菜のサブスクを提案してエントリーしたんです。
そんな状態だったので事業計画すら作成できていませんでしたが、TSGはブラッシュアップ型のビジネスコンテストなので、エントリーしてプレゼンしたら終了ではなく、TSGのビジネススクールで学んだり、メンター役の方に相談したりしながら事業を練っていくことが必須とされていて、起業のためにどう行動したのかという過程の部分も評価されます。TSGで活動することで、自分の事業がプラッシュアップされていきました。ファイナリストになれなかったことには悔しさが残りましたが、MISOVATIONの構想を練り上げ、事業を形づくってきたのだからと起業を決意しました。厳しい指摘もたくさん受けながら、必死で考え続けたTSGでの時間があったからこそ、僕は起業への一歩を踏み出せたと思っています。2021年1月末が最終出勤日で、その最終出勤日にMISOVATIONのクラウドファンディングをスタートさせました。

株式会社MISOVATION 斉藤 悠斗 氏

身体によい、だけでは評価されない

MISOVATIONは食品なので、どんなに身体によくても結局のところ一番大事なのは味です。しかし味には好みがあって正解がないですし、購入者の方々は、一般のおいしいみそ汁と比較されます。普通のみそ汁よりも身体にいいかもしれないけれど、おいしくはないでは勝負できないので販売後もおいしさを追求し続けています。
またこれは食品販売の課題といえるかもしれませんが、まず製品ありきなので、最初にまとまった資金が必要になります。中身にしてもパッケージにしても、製造工場に何百何千というロット数で発注することになります。まだ世に出ておらず、評価されていないものに投資するのは、会社員だった自分にとっては心理的ハードルが高かったです。
そうした課題を解消するのにクラファンは役立ちました。クラファンは受注生産なので資金面でのリスクを抑えることができます。MISOVATIONに対して消費者がどれだけ関心があるのかを知ることもできます。クラファンで購入いただいた方にインタビューを行って、そこで出た意見をもとに改良を重ねることもできました。購入者と直接つながれるクラファンを活用したからこそ、MISOVATIONはより良い製品になったと思います。

海外への発信や、みそ蔵との連携でみその可能性を広げたい

2023年5月にスペインで開催されたフードテックの祭典「FOOD 4 FUTURE」に出展してきました。「日常」「おいしい」「栄養」という3点を満たしているみそのような調味料が海外にはないので、興味をもっていただけましたし、市場としても大きいと感じました。今後はスペイン以外にもフランスやアメリカ、シンガポールなど海外に展開していきたいです。
それから、現在新規事業として「味噌ボックス」というサブスクを立ち上げるために準備を進めています。実は日本国内には1,200前後のみそ蔵があります。そのみそ蔵さんが各自でフリーズドライのみそ汁をつくっていますが、多くの人が知りません。フリーズドライは常温で管理できて冷凍のMISOVATIONよりも管理が楽ですし、海外への輸送にも向いている。軽くてお湯をかけるだけで調理も楽です。
そんなフリーズドライのみそ汁を、ユーザーさんの好みや不足がちな栄養素に応じてパーソナライズしてお届けしたいと思っています。風邪っぽい、目が疲れやすい、睡眠不足、肌荒れ、ダイエット、いろいろな課題をもとに診断して、処方箋のようにみそをおすすめしたい。栄養素の高い健康食品としてアプローチしていき、みそを食べる機会を増やしていきたいです。

株式会社MISOVATION 斉藤 悠斗 氏

起業を目指す方へのメッセージ

何を仕事にするのかという話をする際に、「好き」と「得意」は違うといわれることがあります。いくら好きでも儲からないと事業にならないし、継続もできない。だから「好き」なことよりも、「得意」なことで稼ぐことを選択するという方法もありますが、僕は好きなことを選択するほうがいいと思っています。
仕事は必ずしもうまくいくとは限りません。起業して当たらないことのほうが多いし、忍耐が必要なときもあります。そんなときに、好きでもないことを選択していたら続けられないでしょう。自社の製品やサービスを好きであることが本当に重要だと思います。

記事内の創業・成長支援プログラム

TOKYO STARTUP GATEWAY

TOKYO STARTUP GATEWAYは、テクノロジーから、モノづくり、ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える若き起業家を輩出するスタートアップコンテストです。
優秀なビジネスプランなど、初めは必要ありません。「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、思い切り磨いていってください。

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