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東京都創業NETインタビュー
株式会社Atsumell
山口 公徳 氏
東京大学農学部 農業・資源経済学専修。卒業後は国内損害保険会社での法人向け保険営業、大手日系コンサルティング会社での営業戦略・事業戦略立案プロジェクトなどを経験。その後、エンタメとWEB3.0関連サービスの提供を行うスタートアップに参画した後、2022年9月に株式会社XYLOCOPA(現・Atsumell)を設立する。
株式会社Atsumell コーポレートサイト
推し活を生かしたAIブランドマネージャーで、人手不足のBtoCブランドを救いたい
BtoCブランドとファンを繋ぐ「FaveLink」
利用者数を増やしたいものの、人手が足りずに集客活動に力が入れられない。そんなBtoCブランドの課題を解決するためのAIブランドマネージャーサービス「FaveLink」の開発・運営をしています。
BtoCブランドのファンの中には「このお店が好きだから」「このチームが好きだから」といった思いからSNSを拡散したり、友人を誘ってくれる方がいますが、これらはファンによる無償の集客活動ともいえます。こういった無償で支えてくれるファンの方々に、BtoCブランド側が「ありがとう」の気持ちをポイントというかたちで返す仕組みがFaveLinkのサービスです。
弊社と契約いただいたBtoCブランドは、FaveLink内で作成したページの中で「SNSをフォローする」「友人を招待する」といったミッションを作り、それらのミッションを行なってくれたファンの方々にポイントが付与できます。このサービスが目指しているものは、ライトなコミュニティの創出です。「好き」というファンの気持ちを周りに繋げることが、そのまま集客に繋がる。いわば「推し活」の仕組みをBtoCブランドに落とし込んだサービスですが、感謝の気持ちをお店で使えるポイントとして還元することで、ブランド側にも貢献側にもメリットがあるかたちにしたいと考えました。
ゼロから事業をつくりあげる面白さを求めて起業
大学卒業後は法人向けの保険営業を担当していたのですが、既に完成している事業ということもあり、自分がクライアントに貢献できる部分が少ないと感じていました。その反動から「事業を1から創り上げたい」と思うようになり、起業を視野に入れコンサルティング会社に転職。経営計画の能力を身につけた後、2022年に株式会社Atsumellの前身である株式会社XYLOCOPAを立ち上げました。
実は起業前から個人オーナーとしてプロeスポーツチームを運営しており、起業後も法人として継続していたのですが、ファンづくりで苦戦していた経験があります。そのときにファンの方々が無償でチームを盛り上げてくれたことがきっかけで、「推し活」がチームやコミュニティを自律的に動かしていく仕組みが実現できればとツールをつくり始めました。結局そのツールは、マネタイズの問題や思い描いているようなコミュニティが生まれないといった観点から白紙に返すことにしましたが、これらの経験がFaveLinkの原点です。
立ち上げ当初はリソースが無い中でどうにかしなければならなかったため、まずはエンジニアである高校時代の同級生と、前職の営業職の先輩に声をかけました。彼らが私の想いに共感して手伝ってくれたからこそ前に進んだのだと思います。
同じ事業フェーズの仲間との出会いは心強い
支援制度に関してはネットで検索するなどして積極的に調べ、事業と親和性のあるものには複数申し込みました。その1つがASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)への参加です。週1回のメンタリングでは、顧客にどのような提供価値をつくればいいか、どう営業すればいいかといった部分をディスカッションすることで、事業をブラッシュアップすることができました。濃密なフィードバックをいただけたのが強く印象に残っています。
その他にも、起業した先輩の生の声が聞ける点や、同じ事業フェーズの人たちとの繋がりができたことも参加してよかったと感じるところです。ASACでの出会いがきっかけで共に事業をやっている人たちもいるようなので、私も伴走できるところがあれば声をかけてみたいと思っています。
また、もともとエンターテインメント事業にフォーカスしていたこともあり、ASACと同時進行でTCIC(東京コンテンツインキュベーションセンター)のピッチ特化型アクセラレーションプログラム「TCIC Pitch Campus2023」にも参加しました。ここでは2週間に1回の頻度でピッチをして事務局の方と壁打ちを行うのですが、私自身が受け身の座学よりも積極的に発信してフィードバックをもらうほうが好きなこともあり、まさにという感じでした。最終的にはメンター賞を受賞することができましたが、著名な方々に審査していただいた点も満足度が高かったです。
少ないリソースを最大限に生かすため事業を売却
WEB3.0の領域からスタートしたため、当初は社名をXYLOCOPAとしましたが、プロダクトを1つに絞ってリソースを集中させようと、それまで運営していたブロックチェーンゲーム事業とプロeスポーツチームを2023年に売却。それに伴って社名も株式会社Atsumellへと変更しました。現在は2024年4月にオープン予定のFaveLinkのサービスリリースに向けて、着々と動いているところです。
これまで資金調達にサービスの作成とフェーズごとに辛いことは多々ありましたが、オープン後はこの荒削りなサービスを、どうやってブラッシュアップさせていくかが目下の課題です。まずは営業先のお客様の反応を確認し、そこから改善点を見つけていきたいと考えています。
まだまだこれからのサービスのため、現在の登録ブランドは6社ほどですが、ゆくゆくは多種多様な業種のブランドがFaveLinkに集まり、なおかつ蓄積データを有効活用できるようなコミュニティを目指したいと思っています。資金調達も終えたので、今後はサービスに共感してくれる社員も増やしていく予定です。
起業を目指す方へのメッセージ
会社に所属していると、既にかたちになっている事業を与えられることが多くなります。けれども実現したいことがあるのなら、やはり起業するしかないです。起業すれば、自分の世界をゼロイチでつくっていけますからね。
とはいえ分からないことだらけですので、立ち上げ初期こそさまざまな支援制度を使い倒したほうがいいと思います。私自身も大学やコンサルティング会社で経営についての勉強はしたものの、実際に起業した後にどうするかといったところは右も左も分かりませんでした。だからこそ、数ある支援制度を使い倒して、経営に必要な知識を蓄える。そしてシード期をどうにか乗り越えるというのが、賢い手立てかと思います。ASACなどに参加すれば何かしらの繋がりができるので、創業支援は積極的に使ってもらいたいです。
記事内の創業・成長支援プログラム
東京コンテンツインキュベーションセンター
「コンテンツ産業が集まる中野区で、入居者へのワンストップ支援」
アニメを中心とするコンテンツ産業が集まる中野区という立地で、常駐支援スタッフが、事業化支援やビジネス戦略モデル支援、資金調達やアライアンス先紹介ビジネスマッチング、知的財産管理などを入居者へのワンストップの経営支援を実施します。
青山スタートアップアクセラレーションセンター
5か月間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。