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東京都創業NETインタビュー
株式会社RIGHTHAND
菅原右敦 氏
1988年生まれ。慶應義塾大学を卒業後、商社、株式会社リクルートを経てパシフィックリーグマーケティング株式会社に入社。デジタルコンテンツを活用したパ・リーグの事業開発や、MLB/NBAチームのスポンサーセールス、スポーツ業界の転職支援など幅広い業務に従事。2021年11月に株式会社RIGHTHANDを設立する。
株式会社RIGHTHAND コーポレートサイト
部活にDXを導入し、日々の学びを未来の原動力に変える
令和の部活動は、ITツールとともに加速していく
部活に所属する選手一人ひとりの情報を集約する部活マネジメントアプリ「RIGHTHAND」の開発及び運営を行なっています。パ・リーグのマーケティング会社に勤めていた際にアメリカのスポーツに触れる機会が多かったのですが、そのときに海外ではアマチュアの世界であってもDX化や投資が盛んに行われていることを知りました。そこで、国内でもアマチュアスポーツのデジタル化に関して開拓の余地があるのではないかと立ち上げた事業が、現在のRIGHTHANDです。
RIGHTHANDは部活マネジメントアプリではあるものの、この中に蓄積されたフィジカルデータや練習動画といった情報は、単にチームを強化するだけのものではありません。私たちは「毎日の努力を資産に変える」を理念に掲げているのですが、RIGHTHANDが進路選択の幅を広げるためのポートフォリオや、選手たちが内省するためのきっかけづくりになればいいと考えています。
起業のきっかけとなった社内のビジネスコンテスト
大学卒業後は商社を経て株式会社リクルートに入社しました。起業家を多数輩出している会社で、自分もいつかは起業してみたいと思うようになりました。そんななか、選ばれた企画が事業化されるという社内のビジネスコンテストに仲間とともに参加することに。筋疲労の度合いを測るスマートデバイスをアマチュアスポーツという切り口で作ろうと動き始めました。
右も左も分からないスポーツビジネスを勉強するため、週末にはスポーツビジネススクールに通ったり、スポーツの研究を行なっている専門家に会いに行ったりと準備を進めていったのですが、忙しいながらもまったく苦に感じませんでした。今考えると、このビジネスコンテストでの経験が起業の練習であり、スポーツビジネスの原点だったのかもしれません。パ・リーグのマーケティング会社に転職する機会もビジネススクールで知り合った人たちのおかげだったことを考えると、ここでの経験がスポーツ業界に飛び込むターニングポイントになったのだと思います。
軌道に乗った3期目で起業の登竜門に挑戦
スポーツ業界に飛び込んだことで、アメリカではアマチュアスポーツでもデジタル化が進んでいることを知り、そこに焦点を当てた事業が日本でもできないかと考えるようになりました。それならば起業家であっても最低限のプログラミング技術は必要だろうとの思いからプログラミングスクールに通い、そこで出会ったエンジニアたちとともに2021年にRIGHTHANDを立ち上げました。
順調に事業拡大できたのは、リクルートでの学校営業の経験が大きいと感じています。当時は難易度の高い組織営業で苦労しましたが、そのときの繋がりから導入校を紹介していただくなど、これまでの経験は何ひとつ無駄にならないのだと気づきました。
そして2023年には3期目に入り事業も軌道に乗ってきたため、ASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)に挑戦しました。社会性が強いスポーツや教育の分野は、資金が集まりにくいものの、投資がしにくい領域の起業家を求めているASACに採択されれば、何かきっかけになるのではと考えたからです。
将来は海外展開も考えているため、アメリカのスポーツテック市場の動向を知りたいと思い、ASACと同時進行でX-HUB TOKYOにも参加しました。海外での事業仮説の立て方はとても勉強になったので、海外展開のタイミングがきた際にはX-HUB TOKYOでの学びを見返すと思います。
部活動での経験を社会に出たときの財産に
私たちの事業に興味を持っていただいたベンチャーキャピタルさんと知り合うなど、ASACはファイナンス面での繋がりが持てたことも大きかったのですが、それ以上に事業の解像度が明確になったところが大きな収穫でした。
元々RIGHTHANDがターゲットとする年代や競技は決まっていたのですが、ASACのメンターさんに「部員数が多いとアプリに加入しやすいのでは」とアドバイスをもらい、一緒に拡販戦略を練ることにしました。今後の戦略が明確に描けたのはASACのメンターさんのおかげです。
また、ASACではユーザーインタビューの機会も複数いただいたのですが、ユーザーと会話をする中で、競技能力の向上に焦点を当ててしまうと、一部の選手だけが使うプロダクトになってしまうと気づくことができました。部活の場合は、大半がプロになれるわけではありません。教育活動の一環である部活において指導者である先生たちは、部活での経験を社会に出たときの原動力にしてほしいと願っているのです。だからこそ部活をやっていてよかったと思えるよう、私たちがどこまで寄り添えるのかは非常に大事だと思っています。
起業を目指す方へのメッセージ
周囲に起業家が多かったこともあり起業自体に特別感はなかったものの、妻も子どももいる中での挑戦とあり、人生を賭けた勝負であることは間違いありませんでした。とはいえ、仮に失敗に終わっても、起業の経験をいかして会社員に戻るという方法もあるため、起業に対する心理的ハードルをもっと下げてもいいのではと思っています。
私が学生だった10年ほど前までは起業自体が珍しかったものの、今は学生であっても起業という選択肢が普通にある時代です。ただし、起業が目的になってしまうと、どこかで挫折してしまうと思います。人生を賭けて取り組みたい社会課題があるなど、強い動機があるかどうかが起業においては重要なので、まだ自分の中に湧き上がるものがなければ、それが来るまで待つことも一つではないでしょうか。
私はRIGHTHANDを立ち上げ、仲間とともにブラッシュアップさせていく中で、自分のサービスを愛してくれるユーザーが増えていくという尊い経験をさせてもらっています。これは勤め人では味わえないことであり、これこそが起業家の醍醐味だと思っています。
記事内の創業・成長支援プログラム
青山スタートアップアクセラレーションセンター
5か月間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。