1. 合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

東京都創業NETインタビュー

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏 大学卒業後、客室乗務員や不動産コンシェルジュを経て結婚。2児の母として奮闘しながら一般社団法人新経済連盟の事務局員へと転職。育児ノイローゼになりかけた経験から、親がいつでも気軽に子どもを預けることができる託児所カフェ事業を構想。現在は既存のキッズスペースを活用したPOPUP託児を都内・神奈川にて4カ所運営する傍ら、保育士資格取得のため専門学校に通学する。
ラク育 サービスサイト

親が気軽に頼れる場所として、保育園・託児所に続く第三の選択肢を

子どもを預けるという罪悪感を払拭したい

“スターバックス感覚で利用できる託児所”をビジョンに掲げた「ラク育」を運営しています。既存の託児所の課題を洗い出したところ、親は子どもを預けること自体に罪悪感があるように見えてきました。そこでラク育では子どもと一緒に気軽に来てもらいたいとの思いから託児所にカフェを併設。いきなり他人に預けるのではなく、まずはトイレに行く間だけでも保育スタッフが預かることで、罪悪感を払拭していただければと考えています。
現在はテスト版事業として、レンタルスペースを活用したポップアップ託児を東京・神奈川の4カ所で開設していますが、今年度内には常設の託児所カフェの開設も目指しているところです。これまで託児所は常設店舗のイメージが強かったのですが、レンタルスペースを活用したポップアップ託児でも収益を立てられることがわかり、ポップアップと常設の両輪で進めていこうと考えています。
当日予約も可能なラク育では「今日は疲れたな」と思ったら、パジャマ姿で預けられる身近な託児の選択肢をイメージしています。そのため、商店街や住宅街といった子育て世代のライフスタイルに合致したエリアに増やしていきたいですね。

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

ワンオペ育児で疲弊する親を救いたい

前職は客室乗務員や不動産コンシェルジュといった土日祝日も休めない仕事のため、子どもを育てながら働くのは非現実的だと考えていました。そこで、育児との両立に加えて子どもにまつわる手続きのDX化を進めたいと一般社団法人新経済連盟に転職。500名以上の起業家の方が集まるコミュニティの事務局を担当したことで、これまで遠い存在だった起業がすごく身近になりました。
新経済連盟で勤めていたときには、1人目まではなんとか楽しく子育てをしていたものの、2人目が年子で産まれたことで仕事と育児の両立はギリギリの状態に。子育てというのは本来とても楽しいものですし、私自身も幸福度があがりました。けれども、夫の仕事が忙しく一人で子育てに奮闘していたときに、とてつもなく辛いと感じるようになったのです。そんな心理状態のときに目にしたものが、育児疲れをきっかけとした痛ましい事件のニュースでした。自分を含め、子育て中の人であれば誰もがなりえると思いましたね。
そこで、一人でも多くの親を救いたいとラク育の構想がスタート。行き詰まった段階でいきなり児童相談所に行くのではなく、そのもっともっと前に気軽に預けられる場所や社会の仕組みをつくりたいと思ったのが立ち上げの経緯です。

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

「託児所=常設」のイメージ覆すアイデア

事業の構想は思いついたものの、もしかしたら私の独りよがりかもしれないと思い、まずは土日に子連れで託児所に行き、既存の託児所の課題を洗い出すところからはじめました。それと同時にプレシード期向けのアクセラレータープログラムにも応募。当時は本当にふわふわとしたアイデアのみでしたが、そこで賞をいただいたことが信頼につながり、保育園の親子イベントの企画・運営を任せていただけるようにもなりました。いきなり会社を辞めて起業をするのは自分が後々辛くなると感じたため、まずは副業で親子イベントの企画・運営を行いながら、ラク育の立ち上げに向けた資金や事業計画を明確にスケジュールに落とし込んでいきましたね。
もともとラク育では物件を借りた常設運営を考えていたのですが、保育施設は住民の理解が得られにくいといった風潮もあり、3カ月で約100件の物件をまわっても決まりませんでした。そんなときに新経済連盟から紹介していただいた区議会議員の方から出てきたアイデアが、レンタルスペースを活用したポップアップ託児。これならテナント取得費などで残していた資金で50回は開催できると思い、一店舗目となる世田谷の等々力店でポップアップ育児をスタートさせました。

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

認知度向上のために参加したTSG

ラク育の必要性を感じていた当時の私は、店舗ができればお客様はたくさん来るだろうと思っていたのですが、実際はうまく広告活動ができておらず集客の面で躓きました。そこで私の活動を多くの人に知ってもらいたいと、TOKYO STARTUP GATEWAY(TSG)に参加することに。決勝戦の前にはアクセラレータープログラムで出会った同期の人たちにピッチの練習に付き合ってもらったのですが、皆さん起業家なので鋭い突っ込みが入るんですよね。そんな仲間からの愛の鞭もあったおかげで、TSG2024では優秀賞とメンバーシップ賞の二冠を達成することができました。
その後は地元の新聞社をはじめ、テレビやラジオで取り上げていただきました。メディアのおかげで利用者さんも増えたのですが、それ以上に反響があったのが一緒に働きたいという問い合わせでした。運営周りは現在も私一人で行なっていて、COOのようなポジションを必要とはしているものの、マネタイズの方法がまだ見出せていないので、そのあたりが次の課題です。

合同会社ラク育 奥山 星奈 氏

起業を目指す方へのメッセージ

私も副業からラク育の事業を始めたように、いきなり借金をしての起業は持続可能性を考えるとおすすめしません。アイデアがあるのであれば、まずは想定ターゲット層100人にアンケートを取ってみるなど、自分の貯金の中から10万円を使うくらいの気持ちではじめてみてはいかがでしょうか。
ラク育も表面上はすごくキラキラしていて、どんどん発展しているように見えるかもしれませんが、溺れないように水面下では常にバタ足の状態です。それくらい大変ではありますが、仕事と育児のバランスも自分でコントロールできるので、会社員時代と比べると充実しています。

記事内の創業・成長支援プログラム

TOKYO STARTUP GATEWAY

TOKYO STARTUP GATEWAYは、テクノロジーから、モノづくり、ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える若き起業家を輩出するスタートアップコンテストです。
優秀なビジネスプランなど、初めは必要ありません。「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、思い切り磨いていってください。

PAGE TOP