1. 株式会社NIJIN 星野達郎氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社NIJIN 星野 達郎 氏

株式会社NIJIN
星野 達郎 氏
1990年東京生まれ、横浜育ち。千葉大学教育学部を卒業後、JICAでグアテマラに派遣。現地教員に授業づくり研修を主催するほか、中南米の教育専門家としてオファーを受ける。帰国後は青森県八戸市で小学校教員として勤務し、2022年に教員を退職。株式会社NIJINを創業する。
株式会社NIJIN コーポレートサイト

「教育の仕組みづくり」から、日本中の子ども・教師・学校をHAPPYに

学校を再定義し、新しい教育を創造する

小学校の教員だったときに、自分を出せない暗い顔の子どもが多いと感じました。現在の教育制度は教員も生徒も保護者も頑張っていますし、さらにいえば教育委員会や文部科学省も頑張っています。けれども、不登校の生徒や休職する教員が年々増えているのは、仕組み自体が上手く機能していないのだと気がつきました。
例えば、面白い授業ができる教員であっても、先輩への遠慮や職員室の心理的安全性の低さなどから、能力が発揮できないなど教育現場の仕組みが機能していない。それなのに、教員も生徒も学校に週5日通うことを疑っていないのが現状です。
そこで現在は、子どもたちが人生を自分らしく生きていけるようになるために、自宅から日本トップレベルの授業が受けられるオンラインスクール「NIJINアカデミー」をはじめ、一流教師の授業を見て・語って・繋がることで授業力が高まる「授業てらす」など、13件の教育事業を展開。現在の学校教育の仕組みをゼロからつくり直し、学校教育法の改正を目指しています。

株式会社NIJIN 星野 達郎 氏

「起業=仕組みづくり」だと気づいた教員時代

父が教員だったため教育学部に進んだものの、やりたいことが見つからず自分探しのためにJICAでグアテマラに行きました。海外に行ったからこそ日本の良さを知り、帰国後は日本のためにと青森県で教員として働くことにしたのですが、現場で目の当たりにしたのは自分が出せない子どもたちの姿でした。
教員である妻と結婚して子どもも生まれ、公務員としての安定した生活を送っていたのですが、何か問題が起きると誰かのせいにするような現在の教育制度の仕組みに、いつしか疑問をもつようになっていました。皆が疲弊するほど頑張っているのにうまくいっていない。その根幹にあるものは何かと考えるうちに「起業=仕組みづくり」なのだと気づき、起業を考えるようになりました。
とはいえ、安定した生活を犠牲にしてまでやる価値があるのか、価値があるとしても果たして自分ができるのかは未知数だったため、1年以上かけて事業内容を吟味していきました。

株式会社NIJIN 星野 達郎 氏

経営者として覚悟が決まったメンターとの出会い

本州最北端の青森県で働いている教員の身近には、起業した人はおろか起業の話をする人さえいませんでした。そこで教員をしながらソーシャルビジネススクールに参加したのですが、そのスクールのピッチイベントで優勝した際に出会ったのが、ASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)のプロジェクトマネージャーである會田さんです。馬が合ったのか會田さんにASACに誘っていただいたのですが、当時は「アクセラレーションって何だろう……」といったレベルでした。けれども、會田さんといると人生が豊かになりそうだと思い「NIJINアカデミー」をスケールアップさせる目的でASACに申し込みました。
ASACでは會田さんが私のメンターになったのですが「星野さんの学校に来た子どもたちを救いたいのか、それとも全国の子どもたちを救いたいのか」と初回のメンタリングで問われたことが経営者としての転機になったと思います。当時は自社サービスを伸ばすことばかり考えていたので質問には答えられなかったのですが、そこから学校に代わる選択肢をきちんとつくることで、全国の保護者や子どもたちに安心してもらうことを意識するようになりました。ゴールが決まったことで“自分がどう感じるかではなく、この目的を達成するためには何をするか”という思考になり、立ち止まることがなくなりましたね。

株式会社NIJIN 星野 達郎 氏

新しい教育の輪を世界中に広げたい

同じく會田さんからの紹介で、2024年の夏にはNEXs Tokyoの連携事業創出プログラム(JUMP)にも参加することになりました。これまでの不登校支援は対面支援が中心でしたが、そもそも不登校になると自宅から出ることすらできなくなるのです。だからこそ、家の中でも豊かな教育体験ができることが必須になるため、NEXs Tokyoでは自治体との繋がりを増やして不登校支援の輪を広げていきたいと思っています。そして、その先に見据えていることが、NIJNの最初のステップである学校教育法の改正です。100個の仕組みづくり、100億以上の売上高まで伸ばすことができれば実現できると考えています。
ゆくゆくは海外展開も考えているのですが、それは私自身が海外で働いたことで、日本の良さを再認識したからです。日本の教育を輸出することはもちろんですが、これからはボーダレスに繋がる未来がさらに加速していきます。日本は島国だからこそ、まだまだ海外で働くことへの抵抗感がありますが、日本の子どもたちが日本人として誇りをもち、将来グローバルに働ける環境をつくっていきたいと思っています。

株式会社NIJIN 星野 達郎 氏

起業を目指す方へのメッセージ

私はテストマーケティングのことを“模試”と呼んでいるのですが、「模試をどうつくるか・負けない座組をどうつくるか」が起業においては重要だと考えています。例えば私は最初の模試として、一流教師の授業を体験する事業「授業てらす」のエッセンスを取り出したイベントを行ったのですが、そこでは100人の顧客が集まりました。模試を行ったおかげで、このイベントにお金を払う価値があることがわかっただけでなく、アフター調査で「授業が楽しくなった」という声をいただき、生徒だけではなく教師の人生も幸せにするのだと実感したのです。なぜ授業が楽しくないのか、その背景には教師の力量以外に何があるのか。このように顧客を深く見ることができなければ、起業に成功することはないと言い切れます。
また、見切り発車で起業して苦労をしている方を何人も知っていますが、とりあえず会社を辞めて起業といった方法はおすすめしません。私自身も教員時代から起業準備を進めていたのですが、本業があるから起業ができないのではなく、むしろ勤め人のうちに起業の準備を頑張った方がうまくいくと思っています。

記事内の創業・成長支援プログラム

青山スタートアップアクセラレーションセンター

5か月間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。

NEXs Tokyo

新たな事業展開にチャレンジするスタートアップと、支援パートナー(企業、大学、自治体、VC等)が出会い、連携の幅を拡げ、関係性をも深められるコミュニティ『NEXs Tokyo』を、オンラインと丸の内の拠点施設(新東京ビル4階)で展開しています。。

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