1. カイテク株式会社 代表取締役 武藤高史 氏

東京都創業NETインタビュー

カイテク株式会社 代表取締役 武藤高史 氏

カイテク株式会社
武藤高史 氏
立命館大学大学院で遠隔操作ロボットの研究開発に従事した後、2013年富士ゼロックス株式会社(現富士フイルムビジネスイノベーション株式会社)入社。コストマネージャーとして、新商品の商業用大型複合機の原価目標立案・目標達成までのリーディングを行う。2015年人材系ベンチャーに参画後、エムスリー株式会社に入社。世界最大級の医師プラットフォーム「m3.com」の主力サービスである「MR君Family」などのサービスオーナーを担当。2018年2月カイテク株式会社を設立。
カイテク株式会社 Webサイト

介護福祉・医療のオンデマンド勤務を実現し、本当に助け合える仕組みづくりを

業界初のオンデマンド勤務を実現する「カイスケ」

介護ワークシェアリングサービス「カイスケ」を立ち上げ、運営しています。介護事業者様は介護ワーカー様に対して、希望日時や予算に合わせて1日数時間単位から仕事を依頼できます。一方の介護ワーカー様は面接などの手間を省いてすぐに働け、最短で当日に給与支払いが行われるというメリットがあります。スキマ時間の活用などご自身の都合に合わせて働け、お互いの希望が合えば正規雇用にもつながります。介護ワーカー様は現在、15,000名ほど登録いただいていますが、全員が介護福祉士など有資格者なので即戦力になる方ばかりです。1,500社ほど登録いただいている介護事業者様とのマッチング率は90%以上と活用いただいています。
また「カイスケ」に続いて、看護師に特化した「ナースケ」も立ち上げました。どちらもこれまで介護・医療業界では進んでこなかったオンデマンド勤務(すぐに、クイックに働く)の実現を目指しています。

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祖父母の介護を経験して

私が介護ワークシェアリングサービスを立ち上げたのは、起業家だった祖父が認知症になったことがきっかけです。祖父は戦後のなにもない時代に医療機関を立ち上げた起業家です。実は父と母の父、つまり私にとって二人の祖父はどちらも起業家で、カッコいいなと憧れがありました。小学生の頃から起業が身近で、自分も社会課題を解決したいと何となくですが思っていましたね。ただ憧れだった祖父の介護が必要になってからは、私も家族の一員として大変な思いをしました。特に母の負担は大きかったです。祖父が亡くなると今度は祖母が介護施設に入ることになり、介護が必要な家族を長期間抱えている私たちにとって、介護施設の存在は本当にありがたかったことを覚えています。
会社員だった時に、介護ボランディアで独居のおじいちゃんおばあちゃんの家を訪問したり、現状を把握しようと「おばあちゃんの原宿」といわれる巣鴨に行って街頭インタビューを行いました。怪しまれましたけど、要支援にも認定されていないけれど、日常生活でちょっとしたサポートがほしいと思っている高齢者の生活ぶりなどが分かって勉強になりました。その後、介護士として介護施設で働き始めると現場での人材不足を目の当たりにして、人材確保が急務だと使命感を強くしてきました。

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「君ならできる」という言葉に奮起

経営にはロマンと算盤のバランスが重要だと言われますが、まさしく私も最初はロマンのほうが大きく、厳しい現実に打ちのめされました。当社は2018年2月設立で「カイスケ」のα版を公開したのが2019年12月です。起業した時から社員がいましたが、資金も乏しい。「カイスケ」が軌道に乗るまでは日銭を稼ぐのも大変で、これはもうダメかなと思うことが何度もありました。
そんな時に介護施設で出会った認知症のおじいちゃんが、「君ならできるよ」と言ってくださったことがありました。自分がやろうとしている事業のことを詳しく説明したわけでもないのに、なぜ言ってくださったのかも分からないのですが、その言葉に私は涙が止まらなくなりました。とにかくやるしかないと決意して、まずは自分たちのことを知ってもらい、認めてもらおうとビジネスコンテストなどに次々と参加するようになりました。

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利用できるサービスやPRの機会は全部活用

ASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)に応募したのも、まずは自分の事業構想を知っていただいてアドバイスをもらったり、ネットワークを広げようという思いからでした。ASACの第6期に採択いただいた時は起業間もない時で「カイスケ」も形になっていませんでしたから、よく採択いただけたなと驚いたくらいです。
私も起業して初めて知りましたが、東京都はさまざまな創業支援を行っていて、無料でサービスを受けられるものも多い。起業したい人は何らかの形で利用したほうがいいと思います。私はASACをきっかけに当社のことを知っていただく機会が増え、2020年に経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト」のアイデア部門でグランプリを受賞したり、2021年には総務省主催の「令和2年度起業家万博」で総務大臣賞を受賞するなど、事業を評価いただく機会が増え、出資者にも出会えました。浜松市など自治体とのネットワークが広がり、事業拡大の足がかりになりました。また起業家仲間ができたことが良かったです。同じような悩みを抱えている起業家と情報交換したり、自分よりも一歩先を進んでいる起業家からのアドバイスは非常に参考になり感謝しています。

テクノロジーで新しいケアモデルを

オランダにはビュートゾルフという、介護や看護の専門家がチームになって質の高いケアサービスを提供する在宅ケアモデルがあります。私はこのビュートゾルフからヒントを得ていますが、こういった組織にはICTが不可欠です。日本でも地域包括ケアという地域医療を支える仕組みがありますが、ICTの導入という点で遅れています。日本でもビュートゾルフのような仕組みづくりはできると思っていますし、当社がその仕組みづくりに関わりながら、介護や医療の世界で本当の助け合いを実現したいと思っています。新しいモデルを日本で実現できたら、他の国でも活用できるはずです。高齢化という課題と向き合わなくても済む国はないですから、ニーズは十分にあります。
それからもう一つ。「カイスケ」では介護ワーカー様と介護事業者様が互いに評価し合う仕組みがあります。この仕組みをいかして頑張りが報われる業界にしていきたいです。介護職の賃金の低さはこれまでも指摘されてきました。正当なインセンティブが受けられる業界になることも、人材不足を解消するために不可欠です。なので我々にできることから着実に取り組んでいきたいと考えています。

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起業を目指す方へのメッセージ

志をもって、自分は世の中を良くしていきたいと言い続けていると、助けてくれる人が出てくるし、仲間も集まってきます。苦しい時期はそんなふうには思えないかもしれません。実際に苦しんでいた私もそんな未来を想像していませんでしたが、諦めずに続けていればやっぱり応援してくれる人が出てくるんです。
私は介護業界に何の人脈もなく入りました。業界のルールも何も分からずに入っていったので最初はよそ者扱いでした。けれど自分が志を高くもっていれば、業界のことを本気で考えて、何とかしなければいけないと思っている人とつながっていくことができます。「頑張れ」と励ましていただくといったことが現実になるんです。志があるなら諦めないことです。必ず道は開けます。

記事内の創業・成長支援プログラム

⻘⼭スタートアップアクセラレーションセンター

5か⽉間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには⼤志を持った多くのメンター陣の⽀援を受け、リーディングカンパニーへと成⻑するための機会と場を提供しています。特に⼥性起業家や成⻑産業等、東京都の政策課題に取り組む⽅々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。

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