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東京都創業NETインタビュー
株式会社IGSA
松島 創一郎 氏
東京理科大学理工学部卒。東京大学 大学院工学系研究科 松尾・岩澤研究室とビジョンを共有する株式会社松尾研究所にて教育機関や医療機関とのアルゴリズム開発や、プライム上場企業とのDXプロジェクト、大規模言語モデルのプロジェクトなどのプロジェクトマネージャーを歴任。その後、エッセンシャル領域におけるAI技術の広い社会実装を目指し、2022年8月に株式会社IGSA(イグサ)を創業する。
株式会社IGSAコーポレートサイト
「AI×人間」で、未来の社会システムをやわらかく支える
生成AI基盤モデルの開発から社会を豊かに
弊社は生成AIの一つ下のレイヤーにある「基盤モデル」と呼ばれる部分の開発を得意としています。なかでも音声言語モデルを活用した軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)早期発見の研究開発は、拡大していきたい事業の一つ。認知症は専門医が足りていないだけでなく、複数の臨床心理士による認知機能の評価やMRIによる精密検査が必要になるなど、限られた人しか検査が受けられていないのが現状です。そこで弊社で開発を進めているのが、スマートフォンで実施可能な音声を活用した検査スキーム。認知症リスクのある方に、優先的かつ負担が少ないかたちで受けていただけるような認知症の予兆検出サービスを提供したいと考えています。
2024年には認知症基本法が施行されるなど、認知症早期発見に関する市場は近いうちに現在のがん検診同様の規模になると想定しています。ゆくゆくはエッセンシャル領域を中心とした複数事業の立ち上げを目指していますが、その一つとして現在はサステナビリティの分野にも注目。最終的には認知機能改善サービスの開発に乗り出すなど、先端技術を応用して持続可能な幸せを追求したいと考えています。
身近な場所で困っている人たちを笑顔に
幼少期から身近な高齢者の方々に良くしてもらったこともあり、周囲に困っている人がいれば手助けをしたいという気持ちがありました。とはいえ、当時は社会貢献うんぬんといった思いで動いていたわけではなく、単純に困っている人が笑顔になることが自分の幸福感につながっていたのだと思います。そのため漠然ですが、高校生くらいから起業して意義のある仕事がしたいと考えていました。父が会社を経営していたこともあり、雇われて働くといった考えは昔から一切なかったです。
そこで大学生のときには、大学・企業・スタートアップによる産学共創のエコシステムを実現する株式会社松尾研究所にインターンとして参加。教育の分野が自分には一番身近だったこともあり、まずはスクール事業を19歳のときに立ち上げました。立ち上げから6年ほど関わったものの、社会的なインパクトとしては、あまり大きいとは感じられなかったので、スクール事業は譲渡をし、新たなビジネスを模索しました。より大きな社会的インパクトを目指せる事業をと思いついたものが、エッセンシャル領域が抱える問題をAIで解決するビジネスでした。
現場に足を運ぶことで見えてきた真の課題
人手不足などの問題を抱える介護領域をAIでサポートしようと、2022年8月に株式会社IGSAを立ち上げました。板の間しかなかった日本の住宅に畳が登場したときのように、人々の生活を柔らかく温かみを持って支えていけるものがつくりたいという思いから、泥臭く真っ直ぐで青々としたイメージの「い草=IGSA」という社名を付けました。
ところが実際に介護の現場に足を運んで見えてきたものは、自分たちがもつ技術と現場が求めるもののギャップ。現場が求めているデジタルは介護ロボットのように物理的に動くモノであり、なおかつデジタルになじみの薄い高齢者が多い介護の現場では、AIの技術を生かすのは難しいと感じました。
そこで少し目線を変えて考えた事業が、介護の効率化ではなく介護が必要な人を減らす予防医療の事業。AIによる音声言語モデルを活用することで、MCIを早期発見するシステムを構築しました。当初思い描いていた「介護×AI」では上手くはいきませんでしたが、実際に現場を拝見してお話をうかがう中で予防医療に目線を変えられたのは良い経験でした。
ビジネスモデルを確立するために利用したASAC
軽度認知障害の早期発見事業を拡大させるにあたり、自治体からの支援やコミュニケーションというのは非常に重要だと考えていました。そこで自治体が主宰する支援事業はないかと辿り着いた場所がASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)でした。弊社の場合、認知症リスクのある方を音声言語モデルを使って減らしていきたいという課題解決は明確だったものの、どこから資金を調達して、どのようにサービスを提供するかといったビジネスモデルは一切決まっていなかったため、まずはその部分をメンターとともに固めていきました。
ASACのメンターはAI技術に対する理解度も高く、我々が想い描く未来をビジネスにするにはどうすれば良いのかといった部分を具体的に提示してサポートしてくださいました。企業や自治体に向けて構想に対するフィードバックの機会をたくさん設けていただくなど、弊社が現在検討している軽度認知障害の早期発見サービスのベースはASACで決めたものといえます。
ASACに参加している起業家の皆さんは、社会的意義のある事業を広めたいという目的意識を持った方がほとんどでした。私と同じ16期には敏腕経営者が多く、そのような場所への参加は事業の刺激になるだけでなく単純に楽しいと思える時間でしたね。
起業を目指す方へのメッセージ
雇われて働くという考えが私には一切なかったため、正直なところ起業を迷っている方の気持ちには寄り添えないかもしれません。ただ起業がメジャーになった今、起業がプラスに働くことはあってもマイナスに働くことは基本的にはないと思っています。起業家というのは生き方そのものです。起業するかではなく、起業家としての人生が自分に合っているかどうかだと思います。
起業家になれば落ち込むようなことは頻繁に起きますが、自分で経営する以外の選択肢を私は持ち合わせていないので、落ち込むくらいであれば解決法を考えるといった思考で前に進めています。
記事内の創業・成長支援プログラム
青山スタートアップアクセラレーションセンター
5か月間のアクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。