- トップページ
- 東京都創業NETインタビュー
- トラベルドクター株式会社 代表 伊藤 玲哉 ⽒
東京都創業NETインタビュー
トラベルドクター株式会社 代表
伊藤 玲哉 ⽒
1989年生まれ、東京都出身。医師として大学病院で働く側、終末期患者さんの旅行をサポートするボランティア活動に参加。1人でも多くの願いを叶えるため、2020年にトラベルドクター株式会社を創業。自身もトラベルドクターとして活動中。
トラベルドクター株式会社 Webサイト
「旅行」での体験を通じ、病気を抱えていたとしても “自分らしく” 過ごすことのできる社会を創造する
トラベルドクター株式会社は、病気で “旅行” を諦めていた全ての人が、医療の力で安心して安全に旅行ができる環境づくりを目指す会社です。トラベルドクターとして、年齢や性別・ご病気の種類や重症度に関わらず、旅行を処方できる医療を目指しています。
病気や大切な人との別れを経験し医師に憧れを抱いた幼少期
幼少期から喘息を患っており、入退院を繰り返すような子供でした。発作が起きる度に、医師だった父親が吸入器などを準備して、ずっと側に寄り添ってくれていたんです。
辛い時にそばにいてくれる存在は、すごく温かく「医師ってすごいな」と思っていました。喘息に加え5歳で母を亡くし、幼いながらに「人の命って永遠ではないんだ」と実感。幼少期に病気や大切な人との別れを経験し、「寂しいときに寄り添えるような人になりたい」という思いから医師を志しました。
医師として終末期の患者さんを診る中で芽生えた「最期の夢を叶えてあげたい」という思い
医師として医療現場で働き、たくさんの患者さんを看取る中で、「人生最後の景色が病室の天井で終わってしまうっていうのって何だか寂しい。終末期の患者さんにできる最善の医療ってなんなのだろうか」と日々考えるようになり、当時担当していた患者さんに“今何がしたいか“を聞いたんです。そうしたら「温泉に入りたい」、「故郷へお墓参りに行きたい」、「孫の結婚式に参列したい」など、皆さん思い思いに叶えたい夢がありました。
皆さんが一歩外へ出て非日常を味わうことができる。それって“旅行”に値するほどの価値があるのではないかと思い、旅行を叶える医療、つまりトラベルドクターという新しい医療者としての働き方は出来ないものかと模索する日々を過ごしました。
先輩の核心をつく言葉が起業するきっかけに
患者さんの夢を叶える為には、「考えるだけでなく行動に移さなくては」と思い、終末期患者さんの旅行をサポートするボランティア活動に参加。休日を利用し患者さん1組の旅行を実現させて行く中で、先輩医師に「1日あたり4000人が亡くなっている中で、君が週に1人旅行を叶えたとしても、年間で最大50人ほど。一生かけて取り組んでも1日の亡くなる人数にも満たない。それって自己満足なんじゃないのか。」と指摘を受けました。まさにその通りだと胸に刺さりました。「結局、目の前の方の夢しか叶えられないのでは意味がない。沢山の患者さんが旅行に行ける仕組みを作らなければ」と考えがシフトしていき、“起業”を考えるようになりました。しかし、長年医師として活動していましたが、経営については全くの素人。100年後も機能していく仕組みを作る為に経営学を学ぼうと、勤務していた大学病院を辞め改めて大学院に入学しました。
在学中に参加したコンテストでの最優秀賞受賞を機に、起業に踏み切る
大学院に入学して数ヶ月後、たまたま「TOKYO STARTUP GATEWAY2019」の広告を目にして応募したところ、まさかの最優秀賞を受賞。自分でも本当に驚いたのですが、同じ思いを抱いている方も多いんだなと自信にもつながりました。
コンテストで、賞金と助成金をいただき活動資金が調達できたこと。アクセラレーションプログラムに参加し、起業へ向けてアドバイスいただけたこと。何より、当時審査員だった放送作家の鈴木おさむさんが声援を送って下さり、全く医療と関係ない分野の方々にも、医療現場の現状を知っていただくことができたのだと実感しました。このチャンスを生かして活動しなければという気持ちが前に立ち、まずは「皆さんに旅行を叶える患者さんの姿を見ていただきたい」と、さらなる資金調達のためクラウドファンディングを開始。目標金額であった300万円を達成することができ、2020年の12月に起業に踏み切りました。
トラベルドクターのさらなる可能性を見出した「たびかな」プロジェクト
起業後すぐにコロナ禍になり活動が制限される中で、何かできないかと考え、旅行を叶えるプロジェクト「たびかな(旅叶)」を立ち上げました。クラウドファンディングにて調達した資金を元に、旅行を叶えたい方を公募。すでに数組の旅行を叶え、2021年の6月には、「温泉に行きたい」という患者さんとご家族と共に熱海への旅行も叶いました。旅行当日のご本人の楽しそうな姿はもちろんですが、亡くなられた後のご家族の反応が今まで医療現場で見てきた別れとは違ったんです。医療現場だとほとんどのご家族が後悔されているんですよね。でも、旅行を叶えたご家族は、寂しいけれど最期に旅行を叶えることができてどこか満足そうな顔をされているんです。その姿を見て、トラベルドクターとしての活動は、患者さんだけでなくご家族にとっても精神面的にプラスになる活動なのだと、さらなる可能性を見出せたように思います。
100万人の旅行を叶える新たなプラットフォームの創造
旅行を叶えていく中で、全てが順調に進んでいったわけではありません。主治医からの許可を得る厳しさや、通常の旅行ではない、終末期患者さんの旅行をプランニングする難しさなど、様々な困難も経験しました。今は、「たびかな」プロジェクトで経験と実績を積み、ご家族や主治医の方々が安心して旅行へ送り出せる環境を整えて行きたいと思っています。旅行を実行できるまでの期間や、費用、協力体制など、まだまだ問題は山積みですが、終末期患者さんに少し待ってとは言えません。なので、今は年内のサービス化に向け奔走しています。
最終的には、1年間に100万人の方の旅行を叶えることができるプラットフォームを作り、国内だけでなく海外にも旅行に行けるような体制を整えて行きたいです。
起業を目指す人に向けて
やりたいことがあるのではあれば、まずは行動を起こしてみてください。僕自身、ボランティア活動やコンテストへの参加で、起業へ向け大きく前進したように思います。もし叶えたい事ややりたいことがあって動けずにいるのであれば、まずは声に出して誰かに相談してみることから始めていくのも良いのではないかと思います。何事も新たな一歩を踏み出すには勇気がいりますが、挑戦し様々な人に出会うことで、興味や関心を持ってくれる方も増え、起業へ向け前進してくかもしれません。
記事内の創業・成長支援プログラム
TOKYO STARTUP GATEWAY
TOKYO STARTUP GATEWAYは、テクノロジーから、モノづくり、ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える若き起業家を輩出するスタートアップコンテストです。
優秀なビジネスプランなど、初めは必要ありません。「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、思い切り磨いていってください。