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東京都創業NETインタビュー
株式会社ジョシュ 山﨑康平(左)・永島匡(右)
医療従事者向けのプラットフォームを運営する会社に在籍し、人材ビジネスや新規事業開発を担当していた山﨑康平氏と、作業療法士として患者さんに関わりながら、訪問看護ステーションの立ち上げなどを行ってきた永島匡氏が知り合い、医療介護現場の課題を解決できるシステムの構築を検討。2024年に共同で代表取締役を務める株式会社ジョシュを設立し、業務効率システム「連携ジョシュ」をローンチ。ASAC第18期受講生。
株式会社ジョシュ コーポレートサイト
医療介護従事者の“助手”になりたい。膨大な現場での作業が少しでも軽減される世界へ
医療介護現場に生じるアナログな作業を軽減したい
山﨑様(以下、山﨑):
「連携ジョシュ」は、医療介護領域の業務で必要な書類をPDFにして一括送付したり、連携先の情報を一元管理できる業務改善システムです。医療介護領域では、病院や施設、医療介護スタッフ、患者さんとの間で、大量の書類を紙ベースでやり取りしています。その書類をPDFにして、連携先にメール、FAX、郵送を選んで一括送信できるのが「連携ジョシュ」です。書類の印刷から封入といった郵送作業も、システムを通して代行しています。
医療介護業界で使われるシステムは多数あり、連携先によって使い分けているので使用するシステムの数は増え続けるのに、作業効率を改善したり、アナログな業務を軽減するという根本的な解決にはつながっていませんでした。「連携ジョシュ」は、医療や介護、病院、施設、在宅など導入先は問わず、どこかに届けたい情報があれば、その情報を相手に合わせて届けられるというのが強みですし、他システムと併せて使用することも可能です。
永島様(以下、永島):
私は作業療法士として働いていたので、書類の送付には常に悩まされてきた側でした。例えば訪問看護ステーションで働いていたときは、スタッフ総出で何百枚という封筒に書類を封入するという作業を1日がかりで行っていました。カラー印刷や両面印刷、封入する書類の順番など細かなルールも相手先によって決まっていて、とてもアナログかつ面倒な作業だったこともあり、自分が使いたいものという発想が「連携ジョシュ」の原点になっています。
それぞれの立場から、医療介護現場の課題を見て
山﨑:
私の父が入院した際に病院で忙しく働く看護師さんたちを見て、医療介護業界に携わって社会貢献できたらと考えるようになりました。そこで医療従事者向けのサービスを展開している会社で経験を積んだのちに、外出に課題がある患者さんと介護職の方をマッチングするプラットフォームの運営に関わった際に、同僚から(永島)匡さんを紹介されました。
永島:
私は訪問看護やデイサービス施設などを運営する会社で、作業療法士として現場で患者さんと接する一方で、経営企画にも関わっていました。訪問看護ステーションの立ち上げや、町田市と連携して高齢者や障害をもった方の外出支援などに取り組んでいました。山﨑とは立場は違っても、患者さんの外出支援という部分で共通点があったんです。
山﨑:
デライト・ベンチャーズ運営の起業支援プログラム「Vチャレ」に参加する機会を得ました。そこで匡さんのツテも頼りながら関係各所にヒアリングを行って課題を拾い上げて検討する時間があり、何となく課題の解決策が見えてきたこともあり、起業したいという思いが強くなりました。
永島:
一緒に起業しないかと誘われたときは、正直悩みました。しかし「連携ジョシュ」を生み出すことで、これまで医療や介護業界が抱えていた課題の根本的な解決につながるかもしれないという可能性、チャレンジする価値を感じて起業することにしました。
メンタリングで事業内容が固まり、方向性も明確になった
永島:
起業したばかりの頃は、オフィスもなかったので、丸の内にあるTOKYO創業ステーションを利用していましたが、そこでASAC(青山スタートアップアクセラレーションセンター)を知り、応募しました。ASACを受講して良かったのは、メンターやアクセラレーターとのメンタリングです。ミーティングの時間を数多く設けていただいて、資金調達から人材、それからシステム開発の面など、実に幅広いアドバイスをいただきました。それが本当に役立ちましたし、自分たちの事業の方向性も固まっていったと思います。
山﨑:
ASACの受講期間は施設をオフィス代わりとして使い倒しました。ASACは宿泊もできるので、集中して事業のことを考えたい時などは合宿もしました。受講生との出会いもあり、本当に実りが多かったです。
現場の声を聞くたびに、喜びがこみ上げてくる
山﨑:
起業してからは、大変だったことしかないです。人材、資金調達、サービスの開発と、課題は山積しています。一人だったらこの大変さを受け止められなかったはずで、私たちは共同代表で本当に良かったと思っています。けれどそうした課題を二人で乗り越えた先に、お客様から「現場の作業が削減でき、本当に助かりました」といった、自分たちが理想とする世界観につながるような言葉をいただくと心の底から嬉しく、起業して良かったと思います。
複合機などを製造するリコーが主催するアクセラレータープログラム「TRIBUS」に参加させていただいたのですが、今後はリコーが持つソリューションを活用して、「連携ジョシュ」を改善したり、ゆくゆくはリコーのコピー機を使って、書類をPDF化して「連携ジョシュ」に直結させたいと考えています。
私たちは「机を挟まないような関係性になること」をモットーにしています。間に机を挟んで議論するのではなく、お客様の横に並んで、まるでジョシュ(=助手)のように一緒にお困りごとに対処していく関係性を大切にしています。当事者となる医療介護従事者の方々にたくさんお話を聞き、助手的な役割で解決策を考えてきたからこそ「連携ジョシュ」が生まれたのだと思っているので、そのスタンスはこの先も変わらないでしょう。
起業を目指す方へのメッセージ
山﨑:
よく起業には仲間集めが大事だと言われますが、いかに価値観が合う人と出会い、良い縁を築いていったり、私たちにとってはASACのような良い場に出合っていけるかが重要だと実感しています。起業すると、周囲の方々から助言をいただくことが増えます。助言はありがたいですが、どれが正しいのかと迷うことも増えます。そういうときに、社内外問わず本当に価値観が合う人との縁が助けてくれたり、縁が集まる場所と接点を持っておくことで、自分たちの事業が一気に前進するタイミングが来たりします。だからアンテナを張って、良い縁が集まる場所と少しでも早く出合うことが大事だと思います。
永島:
特に創業期はやることや決断の連続で迷うことも多いですが、迷ったときは、原点に戻ることが大事だと思っています。私たちは、目の前にいるお客様のお困りごとと向き合って解決していくことからスタートしています。目の前にあるお困りごとや、お客様に向き合うことに立ち戻ることを忘れなければ、自ずと選択すべきことが判断できると思います。
記事内の創業・成長支援プログラム
青山スタートアップアクセラレーションセンター
1クール3ヶ月間(プレシード)/5ヶ月間(シード)の短期集中型アクセラレーションプログラムを通して、アクセラレーターや先輩起業家、さらには大志を持った多くのメンター陣の支援を受け、リーディングカンパニーへと成長するための機会と場を提供しています。特に女性起業家や成長産業等、東京都の政策課題に取り組む方々や、ソーシャルやものづくり等、ベンチャーキャピタル(VC)が投資しにくいといわれる分野で起業に取り組む創業予定者やスタートアップ企業をメインのターゲットにしています。