1. 株式会社ブライトン 代表取締役社長 伴照代氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社ブライトン 代表取締役社長 伴照代氏

株式会社ブライトン 代表取締役社長
伴 照代氏
元客室乗務員。出産後に赤ちゃんの世話のために眠れない日々を過ごした経験をもつ。また、身近な人の産後鬱をまのあたりにし、産後鬱から命を絶つまでに至る人がいるという事実にも衝撃を受ける。韓国や台湾には出産後のお母さんがゆったりと過ごせる産後ケアホテルが当たり前にあることを知り、日本にも産後ケアホテルを作ろうと思い立つ。その夢に向けて、現在は、バースコンシェルジュという、これまでになかった仕事を創り、妊娠・出産・育児にかかわる女性の人生をサポートしている。
株式会社ブライトン Webサイト

すべての女性の人生を輝かせるために

株式会社ブライトンは、2015年4月6日に創業。社名は、Brighten=「輝かせる」から、社員はもちろん、かかわるすべての女性を輝かせるという想いから名付けられた。事業は、産婦人科、不妊治療科における医療コンシェルジュ業務、バースコンシェルジュの育成、医療従事者を対象としたセミナー・研修、産科・不妊治療医療コンサルティングを柱としている。

客室乗務員から一転、「産後の女性を守りたい」

もともとは航空会社で客室乗務員をしていて、一生続けたいと思うほど仕事が好きでした。ところが、出産をきっかけに、大きく意識が変わりました。

産後は、夜泣きで何度も起こされ、授乳や赤ちゃんの世話に明け暮れて眠れない日が続き、産後鬱のような状態になっていました。身近な友人も産後鬱になったり、著名なアナウンサーが産後鬱から自殺をするという事件もあり、「出産って幸せなことのはずなのに、なぜあんなに輝いていた女性が自殺するほど追いつめられなければならないのか」と衝撃を受けました。

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何か救いはないかとインターネットで調べてみたら、台湾や韓国には、産後の女性はすべて産後ケアホテルに入り、ゆっくり体を休めることができ、助産師から子育てのアドバイスもしてもらえる。それが当たり前になっていることを知りました。日本にも産後ケアホテルを作れないだろうかと、お世話になった産科医に相談すると、実はそのドクターは、数年前に何人かのドクターとチームを組んで、産後ケアホテル建設のためのプロジェクトを進めていたというのです。プロジェクトは、設計図までできていたのに頓挫してしまったのですが、「そのときの事業計画書をすべて託すから、あなたがやったらどうか」と言われました。

当時は休職中の専業主婦で、起業の知識もない。それなのに、自分でも驚くほどの情熱が湧いてきて、「絶対やらなきゃだめだ」と思いました。子育てで辛かったときに、身近な男性に相談をしても「辛いのはほんの一時のことでしょう」と理解してもらえなかったこともあり、「女性を守れるのは女性しかいない、私がやるしかない」と決意しました。

個人事業主から産婦人科勤務、そして起業

まだ子どもが小さく、すぐには起業できませんでしたが、二人目の子が3歳になり幼稚園に入ったのをきっかけに、個人事業主として産後のママたちが集まれるサロンを開業しました。ネイルケアやマッサージを受けたり、ベビーシッターに子どもを預けたりしてママにくつろいでもらう。母親学級を開き、親子イベントを開催するなど、赤ちゃんとママに関することはなんでもやってきました。

1年間ほどサロンを続けていたのですが、私の活動を耳にしたある人から「新規で産婦人科を立ち上げ、ゆくゆくは産後ケアホテルも作りたい。仕事を手伝ってくれないか」という話をいただきました。サロンにはすでにかなりの投資をしていたので迷いましたが、めったにないチャンスだと思い、サロンを閉じて、その産婦人科に職員として雇われることになりました。

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といっても、私は医療者でも事務の人間でもない。現場の人たちの視線も、「あの人、何のためにいるの?」と、冷ややかでした。「私にできることって何だろう」と悩んだ末、客室乗務員の経験を活かし、初めての妊娠や出産で不安なママたちに寄り添ったり、医師やナースと患者さんの間を取り持ったり、できることは何でもやってみました。

なかなか現場の人たちの理解を得られませんでしたが、患者さんからの「伴さん、ありがとう。おかげで安心して出産できました」という声や、退院後も赤ちゃんを見せに来てくれる患者さんの笑顔が答えだと思いました。
「病院には、医療者でもない事務員でもない、第三の存在が必要だ」と確信しました。それが、バースコンシェルジュ誕生のきっかけです

その病院には3年ほど勤め、2015年に株式会社ブライトンを立ち上げました。
現在、産婦人科、不妊治療科あわせて5件の病院に、バースコンシェルジュを派遣し、患者さんに寄り添ってさまざまな相談に乗ったり、医師や看護師との橋渡しをしたりして、患者さんが安心して医療を受けられるよう手助けをしています。

こつこつと信頼関係を積み上げる、それがやりがいにつながる

起業した当初は、バースコンシェルジュという、今までになかったサービスを理解してもらうことに一番苦労しました。病院の経営者にはバースコンシェルジュの重要性を理解していただけても、現場では「何をする人なの?」と、なかなか理解されず、辛い思いをしたこともあります。しかし、少しずつ信頼を得ることで「この人たちがいてくれて助かる」と思っていただき、それが「この人たちがいないと困る」となるよう実績を積み重ねてきました。

患者様には妊娠期間の10か月間ずっと寄り添うので、家族のような関係になります。患者さんの出産を一緒になって喜んだり、小さなことで泣いたり笑ったり、そんな瞬間がすごく幸せだと感じています。

会社を続ける秘訣は、経営者が社員の前では笑顔でいること

株式会社ブライトンでは、「バースコンシェルジュ」という“人”が商品です。ですから、人を育て、組織を作っていくことが最重要課題と考えています。社員のモチベーションをいかに向上し維持していくか、常に工夫しなければなりません。
でも、一番大事なことは、経営者である私がいつも笑顔で、幸せに働いている姿を見せることだと思っています。資金繰りに困ったり、辛いことは日々あります。そんなときは、上を向いて笑う。常に明るいビジョンを描く。そうやって乗り越えてきました。

迷ったときは、いつも自分に「人として正しいか」と問うんです。「イエス」と答えが出たらそのまま進む。それから、常にみんなに感謝をする。ブライトンに集まってくれている社員、仕事をさせてくれる家族、私たちを必要としてくれる医療機関、患者さん。

それが、会社を続けていく秘訣だと思います。

妊娠・出産から旅立ちまで、女性の人生をサポートしたい

今後は、産婦人科には医療者、事務員、そしてバースコンシェルジュ、3つの立場の人がいるのが当たり前、という世の中にしたい。そして、5年後には、産婦人科、産後ケアホテル、小児科、保育園、カフェを併設した複合施設を作りたい。妊娠、出産、産後、子育てすべてをサポートしたい。そして、いつになるかはわかりませんが、女性の看取りもサポートしたい。最期まで女性らしくその人らしく過ごせるような施設を作りたい。
一生を通じて、すべての女性が輝けるお手伝いをしたいと考えています。

今はまだ小さなステップにすぎません。でも、絶対にできるという根拠のない自信と、絶対にやらねばという熱い想いがある。自分でも不思議なくらいの力が湧いてくるんです。

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