1. 株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

東京都創業NETインタビュー

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏 金沢美術工芸大学在学中に、先山絵梨、田邊樹美とアートユニット「EbRu」を結成し、作品の制作・展示・販売を行う。卒業後はイタリアに留学。帰国を機に同ユニットのメンバーが再集結し、音楽・ファッション・アートを融合したイヤホン「EARMIND」を制作。クラウドファンディングで販売して大きな反響を得た。2021年、3人で株式会社EBRUを設立。以降、ブランド運営や教育事業など、日本の芸術文化を軸としたプロジェクトを展開している。
株式会社EBRU

工芸の未来を切り拓く、古くて新しいものづくり

伝統と感性で紡ぐ新たな日本の粋をカタチに

祖母が和裁の縫製士だったこともあり、幼い頃から着物は身近な存在でした。とはいえ、実際に着るとどうしても苦しく感じてしまい、正直あまり得意ではありません。それでも模様や図案への愛着は強く、それはやがて「残したい」という思いへと変わりました。伝統工芸やものづくりを未来へどうつなぐのか。考え抜いた末に生まれたのが、ほどいた着物地である古裂を封入したグリーティングカード「吉祥花伝(きっしょうかでん)」です。
古い着物地のアップサイクル、300年以上の歴史をもつ丹後ちりめんの採用、全国の布・和紙・染色の職人との共創など、ひと口にグリーティングカードといっても手法は多彩です。こうした取り組みを重ねるなかで、ものづくりにとどまらず、つくり手と素材の魅力を結ぶプラットフォームとしての役割も担うようになりました。一方で、より多くの方に工芸の魅力を知っていただけるよう、同じ図案でも素材や染料を変えて複数の価格帯をそろえ、手に取りやすい環境も整えています。

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

ものづくりの先へ。価値をともにつくる

実は大学時代に、先山絵梨、田邊樹美と3人でアートユニット「EbRu」を結成し、活動していました。卒業後、私はファッション、先山は特殊メイク、田邊は陶磁器へと、それぞれの道へ。それでも「一緒に何かやりたい」という思いは途切れず、私のイタリア留学からの帰国を機に、3人の強みを掛け合わせたイヤホンを実用化しました。それが「EARMIND(イヤーマインド)」です。
一般にイヤホンは機能重視で、わずかな誤差も許されません。けれど、私たちはハンドメイドならではの個体差を価値と捉えています。たとえば、銀ならやや高め、銅なら低めなど、素材によって音の反響が変わります。その差を味わいとして楽しんでいただく。これが従来の製品とは異なる価値観です。
起業前ということもあり、EARMINDの販売はクラウドファンディングから始め、確かな手応えを得ました。ただ、つくり手として作品を出し続けるだけでは伝統工芸の先細りに抗えず、業界を守れません。そこで私たちは「広げ・つなげる役」を担うと決断し、その体制を築くために先山、田邊とともに株式会社EBRUを設立しました。

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

オープンソース化が伝統工芸の未来を変える

会社の設立と時を同じくして、荒川区の起業支援拠点「イデタチ東京」の第1期募集を知り、応募しました。荒川区は町工場が多く、現在も区が内職のあっせんを行っています。私たちも「この業者にお願いできるよ」「この方が得意だよ」と委託先をご紹介いただくなど、実務に直結する支援を受けてきました。
そうして体制が整うにつれ、出会いも連鎖していきます。彫金技法を得意とするアーティストとコラボして制作したEARMINDを外商イベントに出品したところ、隣のブースの出展者から「この技術でネクタイピンをつくりたい」とお声がけいただきました。商品そのものが広告宣伝となり、次の協業を生む。まさに理想的な循環です。
この循環を常態化させるため、製品の裏面に、一般的には伏せがちな制作協力先を明記しています。もし「この布がかわいい」と思っていただけたなら、染め屋さんへ直接ご連絡いただいて構いません。こうしたオープンソースの考え方こそ、文化や技術を次世代へ継承する力になると信じています。

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

APT Womenでつかんだ確信。手仕事でAIを超える

イデタチ東京で得たつながりは心強かったのですが、広がりをさらに加速させたいと思いAPT Womenに応募しました。参加して良かったことは、人脈の厚みです。卒業した今も同期とは集まりますし、期をまたいでの交流も生まれています。
また、APT Womenでは自分とは異なる領域、たとえばIT系の方々と話す機会が増え、システムで解決できることの多さに刺激を受けました。一方で、デジタル化が進むほど手仕事で突き抜けるほうが強い、そして何よりAIに代替されにくいとも実感。私たちが取り組んでいることへの手応えを感じました。
こうしたAPT Womenでの経験を生かし、これまでの「つくる」「つなぐ」に加えて、今後は「とどける」を強化します。具体的には、つくり手とお客さまの間に私たちが橋を架けるということです。泥臭い営業もいとわず、伝統文化や工芸に縁のない方々へ届くよう、接点の間口を広げていきたいと考えています。

株式会社EBRU 佐藤 怜 氏

起業を目指す方へのメッセージ

迷っているなら、まず動くのが一番だと思います。踏み出さなければ何も始まりません。気になる企業やプロジェクトに少し関わってみる。それだけでも前に進みます。
ものづくりも起業も起点は同じです。職人は一朝一夕では育ちません。そこで分業を取り入れ、まずは難易度の低い工程から任せます。続けるほど手が覚え、技量が上がり、やがて職人に近づいていく。最初から「職人になろう」と身構えるより、「少しだけやってみるか」から始めることで、ハードルを高く設定しないことが大切です。EARMINDもクラファンから始めました。小さく試し、手応えを次へつなげる。その積み重ねが起業のハードルを下げてくれます。
さらに、自分たちに足りない部分を見定めて補っていく過程そのものが、次の仕事を生みだすきっかけとなるはずです。必要なのは完璧さではなく、何かしら動くこと。小さな一歩から始めてみてください。

記事内の創業・成長支援プログラム

Acceleration Program in Tokyo for Women「APT Women」

APT Womenは、スケールアップを目指す女性ベンチャーに対し短期集中型育成プログラムを提供することで、スケールアップに必要な経営知識やスキル、それらを共有するベンチャー企業同士の繋がり、更に事業展開に欠かせない協力者・支援者(ベンチャーキャピタル、メディア、大企業等)とのネットワークの獲得を支援します。

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