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東京都創業NETインタビュー

株式会社IKIGAI Ritual 神宮司 希望 氏
大学卒業後、航空会社に客室乗務員として入社。世界中のさまざまな食と触れ合う中で食文化の多様性に魅了され、2013年にオーガニックの卵を使用した朝食専門店「eggcellent」を六本木ヒルズにオープン。6年間で4店舗まで拡大させた後に経営を退き、2018年にプラントベース(ヴィーガン)&グルテンフリースイーツブランド「UPBEET!Tokyo」を立ち上げ、2024年には姉妹ブランド「BENI BITES」をリリースした。
UPBEET! Tokyo
BENI BITES
プラントベース(ヴィーガン)&グルテンフリー×日本の発酵食品がシナジーを起こすヘルシースイーツを世界に
誰もが同じテーブルで楽しめるスイーツを
“みんなが一緒に楽しめるスイーツ”をコンセプトに、プラントベース(ヴィーガン)かつグルテンフリーに日本の発酵食品を取り入れたスイーツブランド「UPBEET!Tokyo(アップビートトウキョウ)」を2018年に立ち上げました。現在は日本全国300店舗ほどでお取り扱いをいただいており、アレルギーを持つ方や健康志向の方だけでなく、幅広い年代の女性にも愛用いただいています。今年からは、日本の伝統的な健康食である干し芋を、どこでも手軽に食べられるようにしたいという想いから生まれた姉妹ブランド「BENI BITES(ベニバイツ)」も新たにスタート。現在はこの2つのブランドを軸に事業を展開しています。
客室乗務員として働いていた時代から、ヴィーガンやハラールなど、さまざまな食の選択をするお客様が身近にいましたが、まだまだ日本では選択肢が少なく、皆で同じ食を楽しめない現実を実感しました。その体験がブランドを通して「食の選択肢の自由を日本にも広げたい」という想いにつながっています。この冬からは海外輸出も決定しており、日本の伝統的な発酵食品にこだわっている点も、海外のお客様に向けて魅力的なストーリーとして伝えていきたいと考えています。

会社員時代から着々と進めていた起業の準備
小さい頃から「いつか何かを自分で作ってみたい」という思いが強く、大学進学時にも起業を視野に入れて経済学を専攻しました。私自身は卒業後そのまま起業するといった選択肢もあったのですが「3年でいいから就職して働いてほしい」という親の強い希望があり、それならば世界中のおいしいものを食べてみたいと、客室乗務員になりました。
行く先々で刺激を受けるなかで「こんな飲食店が作りたい」というイメージが湧き、世界各地でディスプレイやカトラリーなどを買い集めては、自宅にストックしながら開業準備を着々と進めていました。会社を辞めることに不安はなかったものの、退職した先輩から「迷っているときは、辞めない方がいい。準備が整えば迷わなくなるから、そのときがきたら辞めなさい」とアドバイスを受けたことで、迷いがなくなるまで準備を重ねようと決めました。
その後、さまざまな飲食店をめぐっては、メニューや店内の構成を調べて資料に落とし込み、具体的なイメージを可視化していきました。そうしたタイミングでご縁をいただいた方と共同経営というかたちで立ち上げたのが、2013年に私の起業の第一歩となった「eggcellent(エッグセレント)」です。

発想の原点は世界の多様な食習慣
多様な食文化に本格的に興味を持ったのは、卵料理を中心にしたeggcellentを立ち上げてからでした。場所が六本木だったので外資系企業や大使館関係の方も多く、卵が食べられない、小麦が摂取できないなど、宗教、アレルギー、嗜好の違いなどの制約を抱えた方が毎日のように来店されていたのです。横を見れば異なる食習慣の人がいるのが当たり前なのに、日本では給食でも「同じものを食べるのが当然」と教えられてきました。そのギャップに違和感を覚えることもあり、皆が楽しめる食の空間をつくれないかと長年模索してきました。
もともとお菓子づくりが好きだったこともあり、体に負担の少ない自作のスイーツを持ち歩いていたのですが、それをブラッシュアップさせて誕生したものがUPBEET!Tokyoのレシピです。ファーマーズマーケットでデビューした際には即日完売が続き、その人気からスクランブルスクエアでのポップアップにも声をかけていただきました。
ちょうど軌道に乗り始めた矢先、コロナ禍が訪れ、すべてを一人で担うのは難しいと感じ、製造を任せられるパートナーを探すため、生後間もない子どもを連れて1年近く工場を回り続けました。視察先で類似品を出されるなどの苦い経験もありましたが、信頼できる現在の工場パートナーと出会えたことが、今のUPBEET!Tokyoを支える大きな力となっています。

支援事業をきっかけ始まったグローバルへの挑戦
海外の方にもっと日本の食文化を知ってもらいたいという思いが、ずっと根底にありました。日本の良さをしっかりと発信し逆輸入することには興味があったのですが、なかなか行動に移すまでには至らないなか、友人から勧められたのがAPT Womenでした。プログラムがうまく進めば海外事業の支援も受けられると聞き、海外展開の足がかりになればと思い切って応募。採択後は、海外進出における壁を知るためアメリカに行き、ポップアップなどを実施しました。現地では「このブランド名だと伝わらない」「ポイントが伝わらない」などの生の声をフィードバックしていただいたことで、当時考えていたブランド名もパッケージも一新しました。
私のメンターはアメリカにいた方だったのですが、日本語では多く話せることも、英語では突き詰めて端的に話す必要があると教わりました。人前で自分の事業を話すピッチの訓練が非常に多く、「なぜこの事業なのか」「事業を通して社会に何を貢献したいのか」「なぜ私がやるべきなのか」の3点を相手に伝えられるよう叩き込まれたのがAPT Womenでした。今年の冬からスタートするアメリカ展開が叶ったのは、APT Womenに参加したからこそだと思います。

起業を目指す方へのメッセージ
私の場合は起業というよりも、自分が作りたいお店やメニュー、お客様の姿が明確に見えていたため、それをかたちにすることが先でした。そこに大きなサポートが加わり、お店ができたのが最初の起業だったと思います。皆さん最初は漠然としたイメージから始まると思いますが、起業したいのであれば、それをどれだけ見える化するのかが、とても大事だと考えています。最近では、会話型AIサービスを活用してアイデアの壁打ちを行うことも可能になっています。 初期段階の考えを言語化し、整理しながら具体化していく手段として、AIの力を借りてみるのも一つの有効な方法かもしれません。
記事内の創業・成長支援プログラム

Acceleration Program in Tokyo for Women「APT Women」
APT Womenは、スケールアップを目指す女性ベンチャーに対し短期集中型育成プログラムを提供することで、スケールアップに必要な経営知識やスキル、それらを共有するベンチャー企業同士の繋がり、更に事業展開に欠かせない協力者・支援者(ベンチャーキャピタル、メディア、大企業等)とのネットワークの獲得を支援します。
