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東京都創業NETインタビュー

TCIC Pitch Campus 2025 MVP「推しCRY」 橋本 和香 氏
生成AI、VR、IoTなど、多様な先端技術分野において事業立ち上げを主導。新規事業の企画・推進を得意とし、技術とユーザー視点をつなぐプロジェクトに多数携わる。2025年女性起業家向けのアクセラレーションプログラム「RAISE HER」に参加。2025年「TCIC Pitch Campus 2025」にてMVP獲得。現在は、感情を可視化する新しい応援プラットフォーム「推しCRY」の実装を進めている。
推しCRYプロジェクト公式ページ
“推し”の声をデータで届ける。ファンの愛が作品を育てる時代へ
“推し”への声を作品づくりに活かす ― ファンとクリエーターをつなぐ共感PF『推しCRY』
「推しCRY」は、アニメ・マンガ・ゲームなど「商業」作品の「キャラクター」や「シーン」へのファンの“叫び”を、作家・漫画家・声優・アニメーターなど、作品を支える多様なクリエーターに届けることを目指すグローバル対応の応援プラットフォームです。
ファンの「このキャラが好き」「このセリフに救われた」といった感情を言語を問わず“データ”として可視化し、コンテンツ制作に関わる出版社やゲーム会社、アニメスタジオなどIPホルダーとクリエーターに届け、作品制作・グッズ企画・事前マーケティング・プロモーションなどに活用できる仕組みを提供します。
ゆくゆくは、クリエーターやキャラクターなどへの投げ銭や、ファンからの推し「グッズ」を公式と企画などの仕組みを提供する予定です。
「推しCRY」は、レポートによって“推し文化”を感情経済として設計し、クリエーター支援と作品価値の循環を促す仕組みとしながら社会実装やグローバル展開を目指しています。

クリエーターを応援したいという気持ちが原点
私はもともと出版社で働いていて、本が大好きでした。そこで数々のクリエーターさんと交流し、日本のコンテンツのクオリティの高さを実感してきました。しかしその一方で、クリエーターさんが才能の有無とは別で、生活できるだけの収入を得ることの難しさも理解いたしました。どれほど創作が好きでも、生活が成り立たなければ続けられません。だからこそ、クリエーターの方々が安心して創作に向き合えるような仕組みがあればいいのに、と感じました。
もう一つ、私が好きなアニメ『進撃の巨人』のなかで、ハンジさんというキャラクターの最後のシーンがあります。とてもショックで「ああ、ハンジさーん!」と叫びながら観ていました。海外ではYouTubeで感情を共有する“リアクション動画”が広がっている一方、日本ではそうした“叫び”の受け皿や、制作に携わったクリエーターへ想いの声が届く場が増えてもいいのではと思っていました。
この想いが「推しCRY」の原点になっています。

サービス内容を見極めたいと「TCIC Pitch Campus 2025」に参加
私はこれまで15年以上会社員として働き、現在の会社ではCMOを務めています。今まで組織内のチームを活用しながらプロジェクトを推進してきました。しかしいざ個人でプロジェクトを始めるとなると、人材の確保や開発、資金の面が課題になりました。この課題を解決していくために、東京都が運営するスタートアップ支援展開事業「TOKYO SUTEAM」に関連したアクセラレーションプログラム「RAISE HER」に参加しました。
RAISE HERで手応えを感じた私は、起業についてより深く調べるようになり、TCIC(東京コンテンツインキュベーションセンター)の存在を知ります。TCICのサポートメンバーに、出版業界に関わってこられた方もいらっしゃったので、アドバイスをもらいたいと思ったんです。ちょうどコンテンツ事業者向けアクセラレーションプログラム「TCIC Pitch Campus 2025」の参加者を応募していたので、急いで応募しました。

自分の考えに自信が持てたMVP獲得
TCIC Pitch Campusでは、当初「推しCRY」について、かなり厳しいご指摘や意見をいただき、サービスのスクラップアンドビルド作業を繰り返しました。
今まで所属している組織のなかでも、経営陣に新規事業の提案をしたり顧客への説明する経験は多数ありました。しかしそれらは、初見の方を対象としたサービスピッチではありません。同じ説明であっても、誰に伝えるのか、話の進め方や資料の見せ方など、他の参加者のピッチを聞くことでも深い学びになりました。最終ピッチでも、採択された皆さまのピッチを「素晴らしい!」と思いながら聞いていたので、まさかMVPを獲得できるとは思っておらず、驚きしかなかったです。
MVPを獲得したことで、「推しCRY」へのニーズを確信しました。評価してくれた皆さんが「おもしろい!」と言ってくださった「推しCRY」は、商業ラインに載った作品のキャラクターやシーンごとの“想い”を共有、可視化できる点で独自性があります。これまで同じような内容を考えた人もいたはずですが、主流のIP戦略モデルとは違い、既存ビジネスモデルへの挑戦でもあるからだと感じています。
現在はMVPを元に、実証パートナーとなっていただける出版社やIPホルダーの方々と対話を進めています。初期は1~2作品に絞って、「叫び投稿→感情レポート→作品づくりへの活用」の流れを丁寧に検証する予定です。
私は「推しCRY」を、ファンとクリエーターが作品を一緒に育てる場にしたいと考えています。
またこれがご縁で、今後はTCICのコワーキングスペースを利用することになりました。2026年の年明けを目標に起業の準備を進め、資金調達にも働きかけていくつもりです。

起業を目指す方へのメッセージ
起業を考える前に、起業には何より「やる気が大事」だと聞くことがありました。そうは言っても、起業まで決意するのだから、やる気があるのは当然のことだと思っていました。しかし、いざ自分が起業するとなると、本当に「やる気」がなければ、どこまで進めば正解なのか、どの判断が成功につながるのか -- その答えを誰も教えてはくれません。だからこそ、「自分は何のためにこの事業をやっているのか」を何度も問い直すことが、とても大事だと感じています。
「推しCRY」で、クリエーターさんを世界に誇れる日本のコンテンツを支えていくことにつなげていくという私自身の意義をもって今後も進んでいきたいですし、起業を考えている人には、この意義が何なのかを何度も確認することが大切なのだと伝えたいです。私自身、まだ道半ばです。でも、「この意義を信じて、少しずつでも前に進む」。その積み重ねこそが、起業に必要な力なのだと思います。
現在、「推しCRY」の実現に向けて、共創パートナー、実証協力企業、そして一緒に取り組んでくださる仲間を広く募集しています。日本のコンテンツが好きで、好きなアニメやキャラクターについて熱く語り合いながらも、作品を作ってくれたクリエーターを支えたいと想う人がいらっしゃったら、ぜひお声がけください。
記事内の創業・成長支援プログラム

東京コンテンツインキュベーションセンター
「コンテンツ産業が集まる中野区で、入居者へのワンストップ支援」
アニメを中心とするコンテンツ産業が集まる中野区という立地で、常駐支援スタッフが、事業化支援やビジネス戦略モデル支援、資金調達やアライアンス先紹介ビジネスマッチング、知的財産管理などを入居者へのワンストップの経営支援を実施します。
