東京都創業NETインタビュー

kay me 代表取締役 毛見 純子 氏

kay me 代表取締役
毛見 純子氏
早稲田大学卒業。ベネッセコーポレーションに新卒入社。営業およびマーケティングに従事。若手幹部候補による新規事業コンテストで入賞。プライスウォーターハウスクーパースに入社。組織人事コンサルティングに従事。ボストンコンサルティンググループに入社。経営戦略コンサルティングに従事。maojian works 株式会社を設立し代表取締役に就任(2016年6月にkay me株式会社に社名変更)主にIT情報通信、金融、エネルギー、製造 を対象業界とし法人営業組織と新規事業 開発支援のコンサルティング事業を開始。2011年7月、同社内にて kay me 事業を新たに開始。事業プロデュース全般、および デザイン業務などを兼務。

美しく、着心地がいい服で働く女性を応援する

呉服屋さんを切り盛りする祖母の後姿を見て、漠然と会社を経営したいという思いを抱いたkay me株式会社の毛見純子社長。祖母のように責任を持って働く女性を増やすために自身ができることを模索し、ジャージー素材の仕事服づくりにたどりつく。コンサルの世界から服飾の世界に飛び込み、美しく華やか、着心地がいい仕事服で働く女性を支援する「kay me」事業7年目の毛見社長に今後の展望などについて聞いた。

祖母の後姿が起業の原点

毛見 純子インタビュー01

祖母が呉服屋さんを営んでいて、商売を切り盛りする責任や楽しさに幼いころから憧れていました。いらっしゃるお客さまは足袋を新調してほしいとか、嫁に嫁ぐ娘のために着物を仕立ててほしいとか、みんな購入したあとに、他愛もない話をして笑顔で満足そうに帰っていきます。幼心に世の中に貢献できている空気感を感じました。

また、私自身、売上が悪いときにはチラシの裏に広告を書いて祖母を前にプレゼンしたり、何で広告打たないの?と話したりしたりしたのを今も覚えています。商売って面白いなと感じていました。

毛見 純子インタビュー04

祖母は何かトラブルが起きても自分で改善できたのではないかと内省を重ねる人で、責任を持ってすべて担う姿がかっこよく、祖母のように責任を持って働く女性を増やして社会をよくしたいというのが起業の原点です。

責任を持って働く女性の活躍を後押したいという思いを抱きながらも、何ができるか漠然としていました。起業前はコンサル会社に在籍し、ヒト、モノ、金のマネージメントをしておりました。一度、時間に区切りをつけて、コンサルタントとして独立。4年半ほどコンサルティングしつつ、思いを具体化するために当初は家事代行サービスを評価する第三者機関の立上げなどを計画。起業への思いを深める中で手に触れたり、目で見たりすることがいという思いにいたりました。

東日本大震災が起きた2011年3月11日に現在の「kay me」の構想が具体化しました。その日は名古屋のエネルギー会社の最終報告会でした。新幹線も止まってしまい、鈍行で岐阜羽島まで行き、やっと宿が取れて翌朝こだまで帰ろうとしたときに、そうだジャージー素材の華やかなワンピースだと思いつきました。私自身が欧米ブランドのジャージー素材のワンピースのユーザーでした。1枚で着るだけで、上下の服のコーディネートを考えたりせずに、きちんとした感じを出せてエレガントに見えます。ジャージー素材なら長時間着用していて疲れない、自宅でも洗えて仕事で忙しい女性にも、扱いやすいです。

ジャージー素材の仕事服で会社の中に「華」を増やしたいとひらめいたときに、自分の中でストンと落ちて、これは一生かけて追求できるテーマだと強く納得できました。

「モラトリウム」という言葉がありますが、振り返ると子供時代から会社員を続けている時代も、何かが実行されるまでの与えられた時間だったと感じます。何かを目指しながら決断するまでの何かがないので、ひたすらその場で学べるものを学んでいました。

長時間着用していても疲れない、華やかで手ごろな服を

毛見 純子インタビュー02

私自身、ジャージー素材のワンピースのユーザーでしたが、海外製のものが多く、胸元が大きく開いていたり、スカートがはだけるデザインだったり、自宅で洗うと縮んでしまう素材だったりで、なかなか自分が思う形には出会えず、価格も手が届きづらい高価格帯でした。

独立したときに仕事先の経営者の方に「服装は自分自身を表現するものなので、思い切り華やかにしたほうがいい。黒いスーツで眼鏡をかけて難しい顔をするよりは、男女かかわらず、明るく大きな声で挨拶したほうがいい」と言ってくださる方がいました。

「長時間着用しても疲れない、それでいて華やかで、普通に仕事している範囲で買えるもの」というコンセプトが固まりました。アパレル市場はものすごく飽和しているように見えますが、私自身が求めるものはデパートを探したなかでは、なかなか見つかりませんでした。

とはいえ、そもそもどうやって服を作るの?というところからのスタートです。震災の後に友人とおそばを食べていたときのこと。「洋服やりたいんだよね、どうやってやるんだろうね」という私の問いに「知らんわ」という返事でしたが、彼女のお母さまがオーダーメードで洋服をつくっていて、そのテーラーさんに聞けば分かるかもしれないというヒントをもらいました。その方は大阪の本町にいて、3つスーツを仕立てて会計のときに「すみません、洋服ってどうやってつくるんですか?」と思い切って聞いてみました。親切な方で「パタンナーが大事やね」と教えてくださったんです。帰りの新幹線でパタンナーを検索したら「型紙をつくるひと」と出てきて、SNSでパタンナーを検索したら40人ほど登録されていて、一人ひとりの経歴を読み、イメージしているブランド、価値観、デザインに合致する方と連絡を取り、一人ひとり会っていきました。

連絡を取った中の一人が同い年でキャリア系のブランドの方で、その方が大手に所属されていたので、繊維業界やアパレル業界の人脈をご紹介いただくことができました。

自分で生地を仕入れに行き、3,40個生地を選んで、それを商社さんに持ち込んで「こういう服が創りたい」と自分で絵を描いて形にしていきました。その商社の課長さんが「面白いこというなぁ、3ヶ月だけ手伝ったるわ」と言ってくださり、会社というよりは個人的に応援してくれようと動いてくれました。ファスナーが洋服の色に合うように一個ずつ色を合わせてくださったり、知り合いの工場に掛け合ってくださって少量の縫製などをやっていただき、少しずつ思い描いていたものが形になってきました。全部ものづくりの背景をその方に教えていただきました。

生地を買ったり材料を仕入れたりするお金は、コンサルタントで得た資金を充当しました。困ったときは自分で抱えてしまうと厳しいですが声を発することで解決に近づける気がします。

2011年3月に事業が固まり、2ヶ月足らずで形に。

毛見 純子インタビュー04

商社の方やいろいろなかたのご協力があり、5月には思い描くものが完成しました。在庫を抱えるだけでは苦しくなるので販売しなくてはなりません。5月に販売試着会を開き、「kay me」のワンピースをお披露目しました。告知にあたってはSNSを駆使。

まず、ブログで「ジャージー素材の仕事服」が完成した情報を発信。コンサルをやっていたときに夜中につぶやいているブログがありました。けっこうな数の読者数があり、そこで服の販売を始める告知をしました。SNSでも情報発信したら友人がシェアしてくれたり、友達や友達の友達が集まってくれたりしました。試着販売にきてくださった方は「華やかで機能的で要素の掛け算みたいな洋服しか選びたくない。それ以外はいやだ」というニーズがたくさんあることに大きく手ごたえを感じました。

事業開始当初は、7月に銀座のSOHOマンションの一室を借りて、ラックや鏡や絨毯、ソファを買って販売サロンのようにしていました。予約制で試着を開始しましたが、当時はコンサルティングの仕事で収入を得ていたので、電話が入ると移動して接客していました。9月にはECサイトを開きました。

2012年に銀座の教文館のうえのショップスペースに引越しして、予約なしでもいつでも「kay me」のブランドが見られるようにしました。そこに百貨店の方に電話したところ、見に来てくださるようになりました。バイヤーさんが百貨店で展示会のような期間限定ショップを開くのですが、そこでタレントさんのお母様が見に来てくださるようなことがあって、だんだんつながりが広がっていきました。

毛見 純子インタビュー04

これまでコンサルでやってきたこととはまったく異なり、在庫もありますし、従業員も抱えていますし、素材からデザインから開発して、最終的な売り場を持っているお客様のサポートもして、プロモートして。バリューチェーンを全部持つということは考えていたより大変でした。毎日初めてのことばかりですが、同じことはやりたくない性分なのでとても刺激にあふれる毎日です。

海外展開も

毛見 純子インタビュー06

2015年にテストマーケティングでロンドンのメイフェアという街で出店しました。豪華な住宅街があったり、政府関係の方もいる町で、出張されている方もたくさんいらして中東やアフリカ、北米、欧州、アジアの方もいました。「膝丈がいいよね」「丸められるのがいいよね」と日本人の働く女性とほぼ同じ感想でした。海外はオンラインで大きくしながら、市場が大きくなったときにアジアや欧州、北米で出店という可能性もあります。

女性が働くというのはキャリアでバリバリみたいのがありますが、私たちが目指してるのは、もっと華やかで眉間にしわを寄せて難しい顔をするより、花柄でいってみようみたいな世界観を目指しています。一生懸命、だけれどもかりかりせずに働く女性を美しく、楽な服で応援できたらと思います。

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