1. TRIPORT株式会社 代表取締役社長 CEO 岡本 秀興 氏

東京都創業NETインタビュー

TRIPORT株式会社 代表取締役社長 CEO 岡本 秀興氏

TRIPORT株式会社 代表取締役社長 CEO
岡本 秀興
2006年 中央大学経済学部卒業後、株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)に入社。社会保険労務士のスキルを活用しつつ、システムエンジニアとして主にヒューマンリソース系の基幹業務アプリケーション開発に従事。マーケティングからシステム開発まで幅広く関わる。
2014年7月に、ITをはじめ、世の中の便利なツール・サービス・仕組み等を、本当に必要としている人に“簡単・気軽”に利用してもらえる環境を構築すべく、TRIPORT株式会社を創業。
TRIPORT株式会社 WEBサイト https://triport.co.jp/

世の中のためによいと思ったものを作りたい

企業の中で、与えられた仕事に従事するだけでは飽き足らず、自分が世の中のためによいと思ったものを作りたいと、起業を決意。働きながら3年間起業準備をし、大学時代からの親友とともに31歳のときに起業。事業としては、ITソリューションの開発販売、経営・労務コンサルティングを行っている。全社員テレワーク体制を採用するなど、多様な人材が活躍する会社としても注目されており、平成30年度「テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰(輝くテレワーク賞):特別奨励賞」、「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞等:テレワーク先駆者百選」、「東京ライフ・ワーク・バランス認定企業」(主催:東京都)を受賞。新しい仕事を創造するTORIPORT代表取締役社長の岡本氏に、起業のきっかけや、自社が今後目指す方向性などを聞いた。

起業で重要なのは「ビジョン、よきパートナー、資金計画」

株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)で約10年間、システムエンジニアとして働いていました。仕事にはやりがいを感じていましたが、自分の仕事って、1企業、1ソフトの一部分にしかコミットしていない。もっと世の中に大きな貢献ができる仕事がしたいと思っていました。企業で働いている限り自由なもの作りはできない、自分がやりたいことをやるには起業するしかないと考えるようになり、28歳くらいから3年をかけて起業のための勉強やリサーチをしていました。昼間は普通に会社で働いていたので、勉強をするのは夜家に帰ってから。睡眠時間は2時間くらいという日々でしたね。

起業にあたって重要なのは、(1)何をやりたいかというビジョン、(2)よきパートナー、(3)資金計画だと思います。

私の場合、まず「世の中にまだないもので、世の中の人たちに役に立つものを作りたい」というビジョンがありました。今思えばとても抽象的で漠然としたビジョンです。このため、後に痛い目に遭いましたが、これについては後で話します。

2つ目の「よきパートナー」については、私はとても幸運でした。専務取締役 COOの森田一寛は、大学時代に知り合った生涯の親友とも言える人物で、大学時代から「いつか2人で何かやりたいね」と話していたのです。一緒に書店の資格本コーナーに行ったとき、彼は公認会計士の本を手に取りました。僕は、「同じことを勉強しても仕方がない」と、社会保険労務士の本を手に取った。大学卒業後、彼はあずさ監査法人で公認会計士として働き、僕はこれからの時代はITスキルが必須であると考え、社会保険労務士の資格を活かしつつシステムエンジニアとして基幹業務アプリケーションの開発に従事していました。

岡本 秀興氏インタビュー01

社会人になってから数年後に再会し、その時は私一人で起業しようと、自分のアイデアを彼に相談すると、彼も僕の想いに共感してくれ、共に起業することになりました。それぞれが未来を見据えて培ってきた公認会計士や社会保険労務士、またシステムエンジニア等のお互いのスキルは、起業するにあたってとても強みになりました。

会社を経営するにあたって、パートナーの存在はとても重要です。よいパートナーの条件は、次の3つだと思います。 (1)人間として互いに尊敬し、信頼し合えること (2)互いにプロフェショナルなスキルを持ち、それを尊敬し合えること (3)価値観は異なっていてもそれを認め合えること

僕と森田は、人間的にもスキル的にも互いを尊敬し合っていましたが、それでも何度も喧嘩をしました。原因をつきつめるとそれは価値観の違い。でも、相手を変えようとするのではなく、互いの価値観を違うものだと理解したうえで認め合える。それができているからベストパートナーであり続けられるのだと思います。

起業に必要な要素の3つ目、「資金計画」では、最初から全部自己資金でやるというのが、僕と森田の共通した意見でした。VC(ベンチャーキャピタル)を通じて資金調達をすれば、簡単にお金が集まるかもしれませんが、出資者の意向を気にしなければならない、つまりは儲け主義に走ること強制される可能性がある。今まで3社ほどからオファーを頂いたこともありましたが、すべて辞退させて頂いたのも、利益のためだけで仕事をするのではなく、世の中のためになる仕事をしたいと思って起業したので、それだけは譲れないところでした。

そこで、サラリーマン時代から不動産投資等をすることで、生きていくために最低限必要なお金を継続的に得られる仕組みを構築し、万が一給料がなくなってもなんとか生活していけるだけの土台を作って起業に踏み切りました。

岡本 秀興氏インタビュー01

最初の商品が全く売れず窮地に。そこで気づいたビジネスの基本

創業してからビジネスが軌道に乗るまではとても苦労しました。

最初に、経営分析システムを作ったのですが、これが全く売れない。経営分析システムを導入すれば、経営の効率化ができ、必ずメリットがあると確信していましたが、それを企業に興味を持って理解してもらうことが難しい。そもそも経営分析システムというものの存在を知らず、その必要性を感じていないという人たちに向けて、導入のメリットをアピールしていくことは想像以上に難しく、他に事例がない新たな分野にて、「無」から「有」を創造し、「0⇒1」の新サービスを構築して、1円を売り上げるのがこんなにも大変なのかと思い知りました

このときに痛感したのは、自分が起業の際に掲げたビジョンのあいまいさです。
「世の中にまだないもので、世の中の人たちに役に立つものを作りたい」、このビジョンが間違っているとは今でも思いませんが、誰のために、何を作るのか、どのように売るのか、その商品の寿命や今後の成長性まで考えてビジョンを具体化しなければ、ビジネスとして成功しないのだと実感しました。何より、今のTRIPORTの考えの軸になっている「分かりやすさ」という視点が、サービスを創造する上で何よりも重要で、どんなに良いサービスを創造しても、「分かりづらい」サービスであれば、世の中に認知すらしてもらえない、という点を痛感した出来事でした。

しかし、この失敗のおかげで、①世の中にたくさんある利便性の高いサービスやシステム・ツール、また行政が運営している各種制度の仕組み等をわかりやすく紹介する、②企業が持つ潜在的な課題を見える化する、③②の課題を解決するために、①の中から最適なソリューションを提案し、もし既存のソリューションで存在しない場合は、自ら創造する、という具体的なサービスのイメージを描くことができました。

10年先をイメージして、ビジネスのアイデアを考え続ける

営業面でも試行錯誤をしました。最初はリスティング広告を使ったりFacebook広告等で宣伝をしたりしていましたが、問い合わせはあるものの、良質な見込み顧客が流入しづらいため、なかなか成約に結びつかない。しかし、大手企業とOEM契約を結び、大手企業を通じて新規チャネルを開拓できる流れを確立することで、ようやくビジネスを軌道に乗せることができました。

最近では、「働き方コーディネート」や「助成金コーディネート」サービスを提供しているほか、地方創世などのプロジェクトにも取り組もうとしています。
今後、RPA(Robotic Process Automation)やAIの普及など、世の中はどんどん変わっていきます。便利になる反面、ますます複雑でわかりにくくなるからこそ、われわれの「分かりやすさ」を軸としたビジネスは世の中に求められると確信しています。10年先のこともイメージして、これからどんなサービスが必要になるだろうかと常に考えていますね。ビジネスのアイデアは10年先までいっぱいです。

岡本 秀興氏インタビュー02

働きたいのに働けない人たちが輝ける環境を

社員は全員テレワーカー。月に1回の全体出社日以外で会うことはほぼありません。
今、多くの企業が労働力不足に悩んでいます。よい人材は大手企業に集まってしまうので、なかなか我々のような中小零細企業にまで人材が回ってきません。しかし一方で、育児・介護中などのために「働く意欲・能力は高くても働けない」という人たちがいる。この人たちが働ける環境をつきつめると、”全員テレワーク”に行きついた。当社では40%が子育て中の女性です。

せっかくよい人材を育てても、介護や育児で離職してしまうのでは、企業にとっても損失です。新規の採用にも多くのコストを費やさなければなりません。でも、働きやすい環境を整えてあげれば、離職率は低下し新たな採用コストもかからない。

創業以来大切にしていることは、「相手を思いやる」こと。社内のスタッフに対してもそうですし、お客様に対してもそうです。自分がお客様の立場だったらどんなことに困っているだろうか、どんなサービスがあれば助かるのだろうかと考えることが、よい商品やサービスの開発につながる。社内のスタッフに対しても、テレワークで日頃顔を合わせないからこそ、コミュニケーションを大切にし、日々のちょっとした疑問や悩みを話しやすい環境を作っています。それが、社員たちのモチベーションアップにつながり、結果的に会社にとってもメリットになります。

これから起業する人へ~考え抜くことは大切、でも考えすぎて行動できないのではダメ

ウォルト・ディズニーの言葉に「If you can dream it, you can do it.(夢見ることができれば、それは実現できる。)」という名言があります。
強い夢やビジョンを持つこと。事業を継続してくうえで、辛いことはたくさんあります。そういうときに、自分の軸をしっかり保っていれば、くじけることなく続けられます。
「自分はこれがやりたい」という強い思い、そして、それをつきつめて考え抜くことができるかどうかです。

一方で、あまり考えすぎて、情報を集めるばかりでいつまでも一歩を踏み出せない、ノウハウコレクターのような人が多いのは考えもの。とにかく行動することも大事です。行動しながら、「これが足りない」ということにぶつかったら、そのときに勉強すればいい。そのほうが机上の空論を学ぶよりも圧倒的に力がつきます。

たとえ「今の自分にはできない」と思ったとしても、そこであきらめるのではなく「どうやったらできるだろう」と考え抜くこと。今の自分に何が足りないか、パズルでいえば、どんなピースが集まればできるか考える。一つひとつのピースが集まって、あるとき一つのソリューションができあがる。人脈が必要だと考えて、いろいろな交流会に参加する人もいますが、その会の目的やメンバーなどをよく見極めたほうがいい。そうでないと、時間とお金の無駄になります。

今やっていることが何に役立つかはわからない。だけど自分の軸をしっかり持ち続け、信念を貫き通せば、いつか、ばらばらのパズルのピースがぴたっとはまるときがある。その時を信じて、あきらめないでほしいですね。

岡本 秀興氏インタビュー03

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